特殊技術を駆使して撮影された日本の空想科学映画として、初の総天然色作品となったのが大映の「宇宙人東京に現わる」だ。宇宙人が登場する映画としても、日本では初めての作品である。
  この宇宙人-パイラ人は、ヒトデのような星形をしており、中央に大きな目を持つという、一度見たら忘れられない、インパクトたっぷりのデザイン。考え出したのは、岡本太郎という天才美術家らしい。
  ただ、映画の中で、このパイラ人を見ると、人間が星形の布切れを着ているのが丸わかり。興ざめするというか、笑いがもれてしまう。動きもなんかユ-モラスだ。
  また、ポスタ-や宣伝用の写真を見ると、いかにも巨大な宇宙人のように思えるが、映画に登場するのは普通の人間サイズ。巨大な宇宙人が東京で暴れまわるのではないかと、期待して映画館に足を運ぶと、肩透かしを食らうことになる。
  そもそも、このパイラ人、地球を襲いに来たのではなくて、地球人の原水爆開発に警告を与えるために飛来した、平和を愛する友好的な宇宙人。決して悪者ではないのだ。
  むしろ地球にとって脅威なのは、はるか宇宙の彼方から近づきつつある新天体R。このままでは地球と衝突してしまうと、パイラ人は知らせてくれる。
  しかし、そんな緊迫した状況だというのに、物語は何となくのんびりしていて、ほのぼのム-ド。そのためか、せっかくの初物づくしなのに、この映画、思ったよりも話題にならなかった。