福井英一と言えばご存知「冒険王」連載の熱血「イガグリくん」の大ヒットを始め、数々の連載を抱える少年漫画界の重鎮である。
「少年画報」誌でも昭和26年の「どんどこドン助」、昭和28年の「小粒べんけい」と好評連載漫画を次々と生み出し、昭和29年の8月号からいよいよ満を持して連載開始した本格剣豪時代漫画「赤胴鈴之助」が第1話連載…。その直後の6月、不帰の客となってしまったのである。
物語は主人公・金野鈴之助が父の形見である赤胴を手に、江戸の千葉道場へと旅立つ冒頭の名シ-ンで始まる。
最初は道場破りと間違えてしまった千葉道場師範代・横車押之助との出会い、孤児となってしまった身の上話、そしていよいよ江戸での活躍へ…と物語は冒頭から最高潮に盛り上がって、しかもここで中断である。まさしく、青天の霹靂としか言いようがない。
「少年画報」誌では、急遽作者を武内つなよし氏にバトンタッチし、連載を継続。第2話以降も引き続き、赤胴鈴之助の活躍が楽しめるのがせめてもの救いである。
福井英一は享年わずか33歳、急逝された原因は一説には過労とも言われ、数多くの連載を抱えての重圧は想像すべくもないほどである。また漫画映画への取り組みや、読者とのサ-ビスで地方旅行、など八面六臂の活躍であったとも漏れ聞く。
熱血スポ-ツもの、そして語られる厚い友情、さらに独特のユ-モアとほのぼのとした叙情、などは福井漫画ならではの味であり、夢とロマンを語る手塚漫画とは双璧とも言える独自の世界観を持って熱狂的な読者を獲得していただけに、今回の急逝はまさしく、漫画界における最大の痛恨事と言っても過言ではあるまい。
福井氏の御冥福を心よりお祈りする。