幕府による統治を盤石なものとするため、神格化された家康。
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先週放送された、本能寺の変の直後の逃避行を
「神君伊賀越え」
と現代に至るまで呼んで来たのも、その名残りでしょう。
忍びの服部半蔵に導かれ、不可能と思われた伊賀越えを実現してしまった神君家康。
実際のところは、三方ヶ原や大坂の陣で伝わるエピソードからもわかるように、臆病で用心深い性格ですから、前回放送の『真田丸』のみっともない逃避行が事実に近いでしょうね。
もうひとつ。
神君家康という存在を確固とするために、江戸時代になって
「設定を盛られ過ぎてしまった」
人物がいます。
それが、『真田丸』の主人公、真田信繁。
彼のエピソードがどんどん盛られていくのは、江戸時代になってから。
名前も、幸村に変わり、真田十勇士という忍びたちを引き連れるヒーロー幸村が誕生しました。
しかし、史実の信繁は、大坂の陣での活躍が目立つだけで、ほとんど人質としての人生を送っています。
残される書簡を見る限り、父上のような切れ者の印象はありません。
当時の武将としては汚い字、漢字が少なく、平仮名ばかり。
焼酎を送って欲しいという内容も、ちょっと……というものです。
そんなほんの一瞬輝いただけの信繁が、どうして
「日の本一の兵(つわもの)」
と呼ばれるようになったのか?
しかも、家康に反旗を翻したのに。
同じように家康と戦った三成は貶められ、幸村がヒーローになったのはなぜでしょうか?
2人の決定的な違い。
それは、信繁は
「家康の本陣まで迫り、家康は切腹を覚悟した」
ということです。
神君家康が、命の危機を感じるほどの目に遭わされた。
その相手は家康に見合うヒーローでなければ、家康が「臆病者」になってしまいます
(実際は臆病なのですが)。
そこで、家康が神格化されるのと同時進行で、幸村が大活躍した講談が作られたのでしょう。
「あんな強い幸村に本陣まで迫られたのに、勝利した家康、さすが神君!」
幸村を強くすることで、家康の格がさらに上がるのです。
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