５月２４日にリンカーン・センターのミッツィ・ニューハウス・シアターで、リチャード・ネルソン作、デイヴィッド・クローマー演出の'Nikolai and others' を観た。
1920年代前後から多くのロシア人達が共産化したロシアからヨーロッパやアメリカへ亡命した。
この戯曲はソヴィエトとアメリカの冷戦中の1948年、アメリカのコネティカットのウエストポートのルチア•ダヴィドヴァの家で、舞台美術家のセルゲイ•スデイキンの誕生祝いに集まった作曲家イゴーとヴェラ•ストラヴィンスキー夫婦、元作曲家でヴェラの元の夫のニコライ•ナボコフ、指揮者のセルゲ•コウセヴィツキ、振付師のジョージ•バランシーンの亡命者達とアメリカ人でバランシーンの妻のバレリーナ マリア•タルチェフや当時冷戦中のソヴィエトと細い繋がりを芸術家の支援活動で保っていたCIAのチップ•ボーレン等の一日の出来事を描いている。
才能のある作曲家だったニコライ•ナボコフは作家ヴラディミル•ナボコフの従兄弟でもあるが、今はアート関係のプロデュースをし,亡命した友人達の為に、共産主義者への摘発機関が次第に影響を強める中で新しく設立されたアメリカCIAとの連絡係になっている。
ニューヨーク•シティー•バレエの設立の為の開幕公演「オルフェウス」のワークショップがストラヴィンスキーとバランシーンのコンビで創造される中、亡命した芸術家達が直面している問題が次々にニコライに持ちこまれる。生き残る為に作曲を止めてしまったニコライが、ストラヴィンスキーとバランシーンが新しいかたちのバレエを創りあげて行くのを目の前で観なければならない。
そしてロシア人亡命者の中に、パトロン的な存在であるCIAのチップ•ボーレンが姿を見せると亡命者の中で言葉にならない緊張感が走る。
イゴーとヴェラ•ストラヴィンスキー夫婦をJohn Glover と Vera Blair Brown,ジョージ•バランシーンをMichael Cerveris,
セルゲイ•スデイキンをAlvin Epstein,
ニコライ•ナボコフをStephen Kunkenが演じている。
リチャード・ネルソンの脚本は１９４８年のコネティカットのロシア亡命者の家にいる様な生々しい状況を観客に体験させた。世界大戦後のアメリカの芸術発展に多大な影響を与えたこれらのロシア人亡命芸術家達の葛藤を豪華なキャストと共に描いた秀作だった。
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