私は、浅草・雷門、
観光案内所前公道を支配する、
人力車スタッフの何人かには、
アンパンマンの梱包の中身は、
ホワイトボードで、
自分がいる理由、目的を、
明確に伝えてありました。
こうしておけば、その方が、
世間話で、他のスタッフへも、
伝えるだろうと、読んでいたからです。
さて、問題は、いつホワイトボードを出し、
パフォーマンスを始めるか、なのですが、
焦りは絶対禁物であり、
二~三週間どころか、
時に、一か月でも待とうと、
腹を括っていました。
それくらいの覚悟で臨めば、
チャンスは必ずやってくる、
そう信じていたのです。
しかし、きっかけなど簡単に
訪れてくれそうにありませんでした。
ただ、黄色のスーツで、
アンパンマンのレジャーシートで包んだ、
ホワイトボードを持って、浅草まで行き、
2時間、ボッ~と立つだけ。
時に外国人観光客から記念写真をせがまれ、
行政系メディアから取材を受けたりしても、
肝心の漢字はまだ、一文字も
書いていないのですから。
二週間が経過した、とある木曜日です。
私は、場所の選定で、本当に浅草が
適しているのか、疑問を感じ始めました。
相手を外国人観光客ではなく、
田舎の女子高生達が多く来る場所で、
「どんな漢字でも書けます」に変更し、
半ばネタとして完成できている、
パフォーマンスを披露して、
彼女たちのSNSで発信してもらった方が、
浅草で観光客を相手にするより、
可能性として高くないだろうか?
真夏の暑さに耐えて立ち続けながら、
いつしか私は、場所を変えようと決意。
浅草へ来るのは、
今日で最後としよう、
交通費も掛かることだし。
ならば、最後に追い出される覚悟で、
看板を出し、ホワイトボードを立てても、
別に痛くも痒くもないだろう。
そう思い、私は時計を見ました。
時刻はちょうど正午前でした。
私は突然動き出し、
一番、人の流れを妨げない場所へ行き、
梱包を解き始めたのです。
<続く> バッタもん