まるで島抜けのようだ、

 

 6月へと入り、

 自分の身の上に起こるすべてのことが、

 そんなふうに感じられたからです。

 

 6月一杯で、会社は解散

 全運転手親会社吸収

 私一人を除いて

 

 そんな状況の中、

 身の上には有り得ないような出来事が

 連続で発生するのです。

 

 残り一か月を切り、

 いかなるトラブルも起こしたくない私は、

 それまでと打って変わって、

 

 慎重な運転を心掛けましたが、

 まるでそんな心理を嘲笑うかのように、

 

 運転中、絶対有り得ない割込みや進路変更をされ、

 自転車は、信じられない角度から出現してくる始末、

 歩行者は、暗闇から、黒ずくめの女性が現れたりし、

 

 毎日のように肝を冷やし、

 ブレーキを踏んだかわからないほどです。

 

 極めつけは、過去からの襲撃でした。

 

 もう半年以上も前、

 駐車場の斜向かいの家屋に、

 私の不注意から接触させたのですが、

 

 今頃になってその件を蒸し返し、

 社長を巻き込んで大騒動に発展

 

 家屋の破損などほぼ皆無であるのに、

 弁償騒ぎへ発展したのですから、

 心身とも消耗を強いられます。

 

 この件、なにより悪質なのは、

 建物のオーナーも借主もさして、

 問題としていなかったのですが

 

 で、10年以上前辞めた運転者が、

 糸を引いており、元居た会社から搾り取ろうと、

 オーナーと借主さんを焚きつけていたのです。

 

 私とその元運転手の間には、

 過去、これといった確執は

 一切なかったのですが、

 

 解決のために、

 社長に随分と骨を折らせてしまいました。

 

 次々と起こる現実を前にし、

 精神的疲労を覚えた私は、

 状況を冷静に分析しました。

 

 なぜ、こんな現実ばかり起こるのか?

 

 見解Ⓐ 因果応報

 

 身から出た錆。これまでやらかしてきた、

 行いの反動が、退職を前にして、

 一気に噴出しているだけ。

 

 大人の見解としては最も無難で、

 安全確実な解釈

 まず間違いとはなりませんから

 

 見解Ⓑ あるいは妬みかも?

 

 沈没の確定している船から、

 一見安全そうですが、

 

 将来的には、

 これまた沈没確実船へ乗り換えただけの、

 同僚達からの、理不尽な妬み。 

 

 見解Ⓒ 島抜けは重罪だから。

 

 島流しで、こんな場末の

 運送会社へ流れ着いておいて、

 

 残りの人生をどうにかしようとしている、

 発想の厚かましさへの

 人間社会全体からのメッセージ

 

 どれが正解なのでしょうか。

 私という存在との距離を一定に保ち、

 俯瞰できている第三者なら、

 

 きっと一目瞭然、簡単に悟れる真実も、

 私は自分のことなのでよくわからないのです

 

 <続く>          バッタもん