最初に、私とは関係のない話を書きます。
勤め人が職を辞め、個人事業主として
独立を果たすのは、どういうタイミングか?
これには千差万別あり、ケースバイケース。
私の知る最たる特異ケースは、
既に鬼籍に入ってしまった、
友人の工業デザイナーでしょう。
彼は、とあるメーカーの
デザイン部に勤めていましたが、
ほかのセクションとは違い、
デザイン部だけは、服装がフリー。
けれどある時、社則が変更され、
全社員統一で作業服着用が義務化。
彼は、これに猛反発。
カジュアル命。いつも服装は、
ジーンズ・スニーカー・Tシャツだったため、
作業服を着るのがイヤで、
仕事を辞めてしまったのです。
デザイナーの独立もまた、
簡単な話ではありません。
当時はまだ
デジタル導入前だったのですが、
それでも彼が使用する
製図台は、一台55万円。
これに椅子、FAX、コピー機、
各種の器具にペンですが、
デザイナーの使うペンは、
一般のモノとは違い、とても高価。
これを何十種類揃えるのですから、
断じて安くはなく、
彼は、作業服を着るのがイヤで、
一気にここまでの博打を
打ってしまったのです。
ところが彼、デザイナーとして、
上司から高く評価されていたため、
独立後も、
元のメーカーから仕事を受け続け、
何度も通商産業省から
グッドデザイン賞を受賞。
しかし、権威に媚びるのが
大嫌いな反骨者であるため、
トロフィーは常に物置で埃まみれ。
生前、どこかに飾られることは、
一度もありませんでした。
しかし、よく考えれば、
作業服を着るのがイヤと、
実家の廃屋決定、
阪神優勝で独立に踏み切るのも、
本質では、大差が無い気がしてならず、
類は友を呼んでいただけかもしれません。
<続く> バッタもん