「すいません、テレビ番組で、
日頃、皆さんが感じている、
ストレスや苛立ちについて、
お話聞かせて貰っているんですが、
よろしいですか?」
ハンディカメラも持った
男性ディレクターから、
そう声を掛けられ、
私は足を止めました。
こんな人相、柄の悪いオッサンまで
呼び止めるのですから、
使えるネタが拾えなくて
困っていたに違いありません。
場所が場所だけに、
関西ローカルの番組だろうと、
うんざりしていたら、
驚くべきことに、全国ネット。
誰もが知る有名な方がMCの
番組だったのです。
「ええ、いいですよ」
公休日前夜、
ビデオ個室ボックスへ沈没し、
ブログ執筆と、
乃木坂46、30thシングルの
MVでも拝むことと、
アダルトDVDを観賞する
ことくらいしか
用事のない私は、
正直、全く気乗りせず、
煩わしいな~、
くらいにしか思わず
インタビューに応じました。
尺は短く、簡潔に。
少しだけ暴れるも、罵詈雑言は
控えるように。
そう自らへ
言い聞かせながら私は、
おそらく何十ダースも
ストックしてある、
テレビマン達が喜びそうなネタを
拾い集め披露しました。
3~4本出したので、
もう充分だろうと私はその場を
立ち去りたかったのですが、
なぜか男性ディレクターは
簡単に解放してくれません。
どうやら金鉱脈を掘り当てたことを
悟られてしまったようです。
さんざんネタを披露した最後、
私は或いはこれこそ
チャンスかもしれない、
そう閃きました。
ええ、そうです、
これぞ待ちに待っていた、
蜘蛛の糸ではないかと。
こんな千載一遇の好機を
逃す手はありません。
気がつくと私は、
つい口走ってしまったのです。
「もう何年も漢字の勉強をしているのですが、
実力を発揮する機会がないのがストレスです。
漢字の勝負なら、林修先生を倒せるので、
先生と勝負させて下さい!!」
その瞬間、ファインダーを覗く、
男性ディレクターも、
脇で控える女性ADさんも、
驚愕の表情を浮かべていたのです。
<続く> バッタもん