妻がいなくなってからというものの、



仕事だけは崩していけない。



そう思いながら、

毎日を過ごしています。




仕事の成果があった時は、

真っ先に妻へ報告をしていた。



「嫁さん、ただいま~。


旦那、今日も頑張ったよ。


何と店舗で、一番に○○を売ったよ!!」




「おかえり~。


旦那さん、すごーい!!!!


やっぱり、うちの旦那さんは凄いねぇ!!


今日も遅くまでお疲れさま!!」




なんて、


褒めてくれたのにな…。




今は何度ただいまと言っても、

おかえりは帰ってこない。



何度も何度も、

ただいまと言ってみる。




そうすると、


無意識の心の中から、

妻のおかえりが、聞こえる気がするから…。





転職して3年目。



選んだキッカケは、

妻がそのメーカーが好きだったからだ。




本当は、

土日休みにしたかったんだけど、



妻の持病の通院を考えて、

平日休みにした。



また、以前は家でも仕事をしていたから、



給与ベースを下げても、

妻とのゆったりと過ごせる仕事にした。




だけど、結局後半は、



不妊治療と闘病で、

休みのほとんどが病院だった。




こんなに短い人生ならば、

もっと遊びに連れて行ってあげたかった…。



義理の母からの、

お金の無心にも苦しめられた。



あんな捨てるお金に執着などせず、

妻の遠慮を無視して、



美味しいものを好きなだけ、

食べさせてあげればよかった。



欲しいものを好きなだけ、

買ってあげればよかった。



色んなことをしてあげられたはずなのに。








僕は妻に余命のことを、

はっきりと告げられなかった。




でも、


妻の親友から、


「あの子は自分のこと気付いてたよ。


私はもう長くないと思うって、

電話がかかってきて…。


旦那さんは、

先生から聞いて全部知っているはずだけど、


私の為に言わないでいてくれてるのって。



だから、旦那さんには聞かない。


私は旦那さんに全て任せてるから。


でも、旦那さんを独りにするのが一番心配…」



そう泣いて話してたよ、と。





そうじゃない。


僕が、弱い人間なだけ…。




僕は、ただ、



たくさん、辛いことがあって、

たくさん、怖いことを言われて、

たくさん、悲しんできた妻を、



これ以上、泣かせたくなかった。





泣いている妻を、

もう見たくなかった。




妻が辛くなると、

自分のことのように辛くて。




伝えることで、

本当にそうなってしまうんじゃないかと、



ただただ、怖かった…。





だから、励まし続けて、

大好きと言い続けた。



その選択が、正しかったのかは分からない。


今も時折、後悔で胸が苦しくなる…。






何が月命日なんだろう。


法要とは何なんだろう。



僕にとっては、

一人家に帰ってくる毎日が辛いだけ。



返礼品がなんだの、決まりがなんだの、



妻はもういないのに、


一体誰の為にやってるのか、

分からなくなる。





妻はもう戻ってこない。



これが現実だ…。




写真を整理していると、

やっぱり、泣けてくる。




息子と妻が、

同時にいなくなった。



これが僕の人生の、現実。





あの時、再発が分かってから、



息子に供えている花の世話をしながら、

妻が泣きながら言った。




「○○君のお花の水、


頑張って綺麗にして毎日替えたって…、


何にもいいことなんてないじゃない…」






俺もそう思ってるよ。

何にもいいことなんてない。




それでも、明日もまた。



頑張っていかないと、

いけないんだよね…。



目標もなく前へ進んだところで、

すぐ引き戻されてしまうけど、



ほんの少しづつでいいから、

前へと進んで行かなきゃ。





嫁さんが、

たくさんたくさん頑張ってくれた分、




旦那も、

頑張るからね。





負けないよ。