膀胱摘出の手術後、
ありがたいことに、
先生から新薬を使えるとお話がありました。
オプジーボという分子標的治療薬。
再発や転移を防ぐための薬を使えると、
私達は喜びました。
3ヶ月経ったら評価をしましょうと、
2週間に1度、1ヶ月に1度と、
病院を訪れ、
主治医からの「数値も大丈夫ですね」
という言葉を聞く為に出向き、
安心していました。
しかし、3ヶ月目頃から、
「お腹が張ってる気がする」
「お腹が少し硬い気がする」
「最近、夜になると微熱になる」
と、違和感を感じ、
主治医にも訴えましたが、
術後の癒着や腸動痛、
オプジーボの副作用かもしれないと、
問題視されませんでした。
4月の評価を前に、
食事を摂る度に痛みが出るようになり、
とても耐えられなくなり、
病院へ駆け込みました。
そこで再発を伝えられました…。
私は頭が真っ白になるも、
涙を流しながらも、
まだ大丈夫!
再発したら治せばいい!!
と気持ちを堪えるのも空しく、
翌朝、脱水症状を起こしてしまい、
緊急入院となりました…。
妻の入院道具を取りに帰り、
1人残された家で大声で泣きながら、
入院道具を詰め込みました…。
そして、主治医の先生からの電話で、
絶望的な現実を突き付けられました。
どうしてもっと早く、
気付けなかったんだろう…、
どうしてこうなってしまったんだろう…、
そんな後悔の気持ちが溢れて、
胸が苦しく震えました…。
自分なんかと出会わなければ、
妻はいつまでも笑って過ごせるような、
人生を過ごせていたんじゃないか。
夫となる人間が他の人であれば、
妻は今も元気に過ごせるような、
人生だったのではないか。
あと1ヶ月早く自分が気付けていれば、
もう少し何か良い手を打てたはず…。
「オプジーボは、副作用が強い人ほど、よく効くんです」
この言葉を信じて、
何も無いことを願っていました。
情報を持たない人間が、
馬鹿を見るのだろうか??
勝手に信じたやつが、
馬鹿なのだろうか??
いや、
先生が悪い訳では無い。
それは分かっている…。
再発がなく大丈夫と、
そう思いたかった自分の心が、
判断を鈍らせた。
膀胱がん、発覚の時も同じ。
2年間通っても疑われず、
「40代の妊婦さんで、進行型の膀胱がんなんて、前例がありません。誰も疑わないんです」
そう、先生達は言いました。
きっと妊婦さんに多い膀胱炎なんだろう、
膀胱炎に違いない。
でも、違ったじゃないか。
あの時の自分もそう思い込んでいて、
後悔したのに…。
それなのに…。
妻に申し訳ない…。
妻を大切にしたい。
普通の幸せな人生を歩ませてあげたかった。
母として幸せになって欲しかった。
それなのに、
妻の人生を奪おうとしている…??
本当に申し訳ない…。
許して欲しい…。
助けたい…。
奇跡を呼ぶしかない…。
こんな自分と出会わせてしまって…。
ごめんなさい…。
病気を直してくれないのであれば、
自分の寿命を半分あげてもいい。
妻が元気になるなら、
自分に関する記憶を消してあげて、
違う人生を歩ませてあげたい。
ずっとずっと、
幸せに元気に生きて欲しい。
それだけ…。
妻はこの今も入院しながら戦っている。
日に日に先生からの悪い話が増えてきている。
治療の幅が狭まってる。
抗がん剤も効いてるのかどうか分からない。
でも、まだ諦めちゃダメだよね。
今、自分に出来ることを探そう。
