昔から
人の体の中で、手が最も美しいと思っていた。
特に指を柔らかく曲げた造形は最高だ。
瞳と同じくらいに
細やかな感情を表現できる、繊細な存在。
今までの人生で親しくなった人々の指の特徴は
全てはっきりと覚えている。
指先だけの写真を見ても
全員名前を当てる自信があるくらいに。
今年
自分も不惑の歳を迎え
ふと気がついたことがある。
自分の指を何とも言えず、好きになった。
美しいとは到底言えない太く無骨な指だが
これがありのままの自分だ。
そして
これからも
何十年と愛おしいものを触り
何万回と料理を作り
何億回と文字を刻んでいく。
感謝してもしきれないもの。
歳を重ねると
こうして
愛おしいものが増えていく。
こういう考え方も悪くない。