数学者:新井紀子さんの『AI VS 教科書が読めない子どもたち』や『AIに負けない子どもを育てる』は内容がかなり衝撃的なため、多くの教育者や保護者に読まれているみたいです。

[新井 紀子]のAIに負けない子どもを育てる

新井さんが開発した読解力を測るツールであるRST(リーディングスキルテスト)は多くの学校や企業で採用されているようです。

 

正答率は中学生で25%、一流企業の社員で30%ということなので、読解力のない人が、学歴に関係なく多いといえます。

 

私も『AIに負けない子どもを育てる』を読んで例題をいくつかやってみましたが、簡単なものもあれば、かなり考えないとわからなかったり、よく考えても回答がわからないものもありました。

 

1冊目の教科書が読めないのほうは、なんとなくの関心から読んだだけですが、2冊目のAIに負けないのほうは、企業の担当者のコメント、「仕様書やメールの誤読が多く、現場は混乱していて働き方改革どころじゃない」が目に入ったため、急遽自分の身近な問題と捉えて読み始めました。実際、慌てて読み飛ばした、読み間違えた、というのではなく、短い文章なのに、何度読んでも意味を正確に理解できないという問題が職場で起きていたからです。

 

新井さんの本の例をあげます

 

・ 幕府は、1969年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。

・ 1969年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

 

この2文は同じ意味でしょうか。

 

もちろん答えは「異なる」です。

 

しかし、中学生の正答率は57%なのです。

高校生でも、なぜ「異なる」なのかわからない生徒がいて、単語が7つ共通だから部分点があってもいいのではないかと言うそうです。

 

自分の職場でも似たようなことが生じていました。

なのでまじめにこの本を読みました。

 

新井さんは読解力を「AI」との関係で論じています。

AIは読解力があまりなく、文脈を理解できない。AIは単語の拾い読みをするので、~じゃない、~ではなくて、などが理解できない、なので同じように単語の拾い読みをしていると短い簡単な文章でも意味が理解できない、このように警告を発しているのです。先ほどの幕府の文章も、AIなら同じ単語が7つあることで、「同じ内容」と判断するのです。

 

つまり、穴埋めテストに慣れ、単語拾い読みだけしていて、きちんと読書をしたことがないことが読解力低下の原因であるとしています。

 

私もこの点については同じ考えです。

 

ただ…

ちょっと気になる点があります。

新井さんのこの本をいろんな人が取り上げているのですが、どの人も全面的に肯定していて、現役の小学校の先生などは、「教科書程度の内容を理解していない子どもがこんなにも多いことにびっくりした」と言っているのです。

 

実は、私はテストの中で、あれ?難しい!!これって、何が正解なの?と思うような、すごく難解なものがあって、新井さんは、簡単な文章だと言って説明しているのだけど、ちょっと腑に落ちないというか、すっきりしない気分はあったんです。

 

例えば、

A 誰もが、誰かをねたんでいる。

 

これを受動態にすると、どうなるか?

 

これは英語で考えると、おそらく、

誰かが、誰も(かも)にねたまれている。

になるのではないかと思います。でも不自然ですよね。

 

新井さんの答えは、自然な受動態にはならない。しかし、多くの人が

B 誰もが、誰かからねたまれている。

とAは同じ意味だと考える、というのです。

 

人間が100人いれば、100人全員が誰かを(1人~99人)ねたむ。

つまり、ねたまれる人は100人全員ではないのです。

 

でも、この問題は問題自体が問題だと思うのです。

こんな文章は契約書や約款、マニュアルで使うべきではないです。

新井さんのいう読解力がそういったものを想定しているのだからなおのこと。

 

教科書程度が読めないなんてびっくり!

なんて、現役の先生が言ってることにびっくりです。

 

日本の教科書は教師が説明してはじめて理解可能ですよ。

前々から日本の教科書の薄さや人ありきの内容に不安はありましたが、コロナで休校になり、こういう教科書が一つも役に立たない、ついでに先生もああいう状況では役立たずだと痛感しました。

 

読解力が全体的に落ちているのは確かです。

でもこういった内容の本を真に受けてしまうのも大きな問題です。

 

教科書を読めない子が多いのは、読解力の低下と、もうひとつは、教科書自体のまずさです。

教科書が読めない子を読解力のない子と断定してしまうと、他の本や他の媒体なら学べる可能性をなくしてしまいます。

 

合わないテキストはたとえその業界のバイブルであっても、超有名人が書いていても、サルでもわかると銘打っていても、捨てる。

これ、大人なら常識です。

教科書やテキスト、誰から学ぶか、どう学ぶかは学ぶ自分自身が決める。

子どもだってそうあるべきだし、その権利はある。

 

新井さんの言ってることはおおむねいい。

でも、誰の言ってることでも、どんな立場の人の言うことでも、誰にでも万能じゃないし、全部あってるわけじゃない。

 

現役の先生なら、子どもが変わった、などと、社会学者みたいなことを言っていないで、目の前の子どもをみてほしい。

 

2年ほど前に新井さんの本を読んだときは、もやもやしながらも、実際職場で読めないことが問題化してたので、やはり読解力はつけないと…とやみくもに思った。

でも、英語の文法をやり直すなど、いろんなことをやってみて、読解力ってそもそもなんだろう?

正しい文章って?って思うようになった。

 

ぜんぶ絵文字とスタンプになったらこの問題なくなるかな…