放射線といえば、危険なイメージもありますが,役に立つ利用例もたくさんあります。
●物質を透過する性質(透過作用)
レントゲンやがんの放射線治療はよく知られた応用例です。
●物質を透過するさい、その物質を作っている原子や分子にエネルギーを与えて、原子や分子から電子を分離させる性質(電離作用)
●物質にあてると、その物質に特有な波長の光を放出する性質(蛍光作用)
●写真フィルムを感光させる性質(感光作用)
その他、植物の品種改良,医療器具の滅菌,半導体の製造などにも利用されています。
人も地球も宇宙もみんな、原子や分子でできています。
この原子を構成している電子、陽子、中性子、さらにそれらを構成してる素粒子、逆にそれらから構成されている原子核などが、高速で動いているものも放射線と呼ばれています。
つまり、放射線とは,照射した物質に電離をおこすことのできる,高いエネルギーの流れのことを指します。
放射線には,レントゲンに使われる「X線」以外にもいろいろな種類があります。
「アルファ線(ヘリウム原子核)」,「ベータ線(電子)」,「ガンマ線」,「中性子線」などです。
X線とガンマ線はエネルギーの高い電磁波(光の仲間)ですが,そのほかは何らかの粒子の流れです。
光の正体を光子という粒子として考えることもあるので、放射線は全て「粒子」が正体ということもできます。
今、福島県の原発による放射線の被曝が大きな問題となっていますが,被爆をうけると人体に悪影響をおよぼす可能性があるといわれています。
ではどのような影響があるのかといいますと、放射線が細胞のDNA(デオキシリボ核酸)など,重要な生体分子を傷つけることがあるからです。
放射線が直接,生体分子を傷つける場合もありますが,間接的な影響の方が一般的には大きいといいます。
放射線が水分子を分解し,「活性酸素」を生じさせ,この活性酸素が生体分子を傷つけるのです。
とくに放射線の影響を受けやすいのは,活発に分裂する細胞です。
細胞の中でもがん細胞は活発に分裂するので,正常細胞にくらべて放射線の影響を受けやすいのです。
放射線が,がん治療に有効なのはこのためです。
よくニュースなどで耳にするマイクロシーベルトという単位ですが、シーベルトという呼称は、放射線防護の研究で功績のあったスエーデンの物理学者のロルフ・マキシミリアン・シーベルトにちなんだものです。
毎時シーベルト (Sv/h) とは、1時間あたりの生体への被曝の大きさの単位です。
1 Sv = 100 rem = 100,000 mrem (ミリレム)
なお,放射線に似た言葉である「放射能」は「物質がもつ,放射線を出す能力」のことです。
つまり、放射能とは、原子核が崩壊して放射線を出す能力のことです。
放射能の単位はベクレル(記号 Bq)であり、1Bqは1秒間に1個の原子核が崩壊することです。
まだ解明されていないことがたくさんありますので、できるだけ放射線は浴びないようにするのが賢明です。