『浪速のジョー!』

　
　１９７０年５月１５日生まれ。もうすぐ３９歳。１９歳でプロデビューしたので２０年間。人生の半分以
上をプロボクサーとして生きてきたことになる。　戦績は２７戦２０勝（１４ＫＯ）６敗１分。　そのうち
世界戦は１１戦５勝６敗。　網膜裂孔　網膜はく離　下腿筋断裂。　２０年という年月にくらべて戦績が少
ないのは辰吉のボクサー人生がまさにブランクとの戦いだったということを物語っている。世界戦を負け越しているにもかかわらず絶大なる注目を集めてきたのは、日本人最短世界奪取など記録に頼るだけでなく「辰吉丈一郎」という唯一無二のキャラクターによるものが大きい。
　昨年１０月２６日、５年間という自身過去最長のブランクを経て、タイのバンコクで復帰戦のリングに上がった。「緊張いうか　さすがに５年は長かった。」めずらしく弱音を吐いた辰吉。ただそれは、「バンテージまくタイミングとか　ちょっとしたリズムを忘れてまっている。」とういう繊細な部分でのハナシ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「すぐにでも次やりたい。」
　浪速のジョーはいま、自分自身と戦っている。うまく言えないが、今が一番ボクシングと真剣に向き合っ
ているのではないかとも思う。得てきたものと失ったものとの鬩ぎ合い。確実に迫り来るボクサーとしての
幕切れ。
　僕はこんな偉大な男を撮りつづけてこれたことに感謝したい。そして「浪速のジョー」が最後に光り輝く
ときまで　これからも敬意をもってレンズを向けていくだけだ。

　復帰第２戦は　３月８日　タイ　バンコク。　