・・・負けやがった。

 ゼ・ルイスが出ていれば試合結果は変わっていたかもしれませんが、なんつーか、そういう次元の話じゃない。試合終了後は、記者席からブーイングを浴びせようかと初めて本気で思いました。

 試合前日に監督が口を酸っぱくして天皇杯の怖さを伝えたこともあり、試合前の雰囲気を見る限り、選手たちに油断はなかったように感じました。もちろん、サポーターの応援だってしかり。

 だけど、いざゲームが始まってみると、J2下位クラブ以上に相手がゴール前だけを固めてきたこと、中盤でマルクスや大橋がJ2では考えられないほど自由にボールを持たせてもらえたこと、そして相手の中盤にミスが多かったことなどなど・・・立ち上がりの感触から「まぁ、普通にやっていればイケるだろ」と踏んでしまったのでしょう。だって相手は、格下のJFLクラブ・栃木SCですから。さらに試合中の彼らの頭の片隅に、来週の正念場・柏戦のことが少なからずあったことも容易に想像できます。

 そしてこれが、試合中の選手たちの「点をとること」に対する意識を徐々に狂わせていった。


 ここで最優先されるべきなのは「点を取ること」だったはずなのに、「怪我しないこと」を意識するあまり、「接触プレーを避けた形で点をとる」という条件に合致するプレーばかりを選択するようになってしまっていた。運動量はなく、リーグ戦ならば力強く行っていた場面でも、テクニック差を利用した綺麗なボール回しや崩し方を優先させようとする姿勢が目立ち、最後は、相手の体を張ったプレーに跳ね返されていくばかり。前半のピッチ上で表現されていたのは、そんな見かけだけで勇気のないプレーだった。そしてあろうことか、選手たちは前半を終えるまでにその意識を軌道修正することをしなかった。

 

 敗戦後の会見で、ラモス監督は「前半で既に負けが決まってしまった」と切り出しました。

 「だったら、後半で修正するのがお前の仕事だろ!」と誰もが思うだろうし、事実そういう質問も出ました。サッカーの試合は90分通じてのスコアで決まるものなのだから、この監督としての仕事を放棄したかのような発言に違和感があって当然です。

 だけど、この表現で監督が言いたかったのは、そんなことではないでしょう。

 「なぜベストメンバーである自分たちがこの試合で起用されているのか」

 選手がその意味を理解しようとせずに、あの程度のパフォーマンスで前半を終えた姿勢が許せなかったのだと思います。

 実際、前半に心を揺さぶられるようなプレーはひとつもありませんでした。

 ちょっと視点を変えて、監督の立場になって考えてみて欲しい。

 今年最大の目標はJ1昇格だが、現在その旗色は極めて悪い。

 

 そんな状況で迎える、昇格レースとは関係のない格下相手のカップ戦。

 しかも来週には、その正念場となるゲームが控えているスケジュール。

 本来ならば、サテライトメンバーを多く出してやりくりするのが賢い方法なはず。ベストメンバーで挑んで勝利しても、この試合でもし怪我人を出してしまっては、デメリットのほうが大きい。一方のサテライトメンバーにしてみれば、「もしここで頑張れば、柏戦にもチャンスがあるかも」という高いモチベーションで試合に臨んでくれるのは間違いない。

 しかしラモス監督は、あえてベストメンバーで試合に挑んだ。

 その理由として「いまの自分たちに余裕がないこと」を挙げてましたが、おそらくこれは本心でしょう。

 今のチームは、相手が格下であれどうあれ、真剣勝負の場で一つでも多く勝って自信を積み重ねていくのが大切。

 そんなギリギリの状況だからこそ、チームの成熟をはかるため、控えメンバーではなく、全力で勝ちに行く選択を決断した。

 もちろん、選手たちにはトーナメント戦の怖さを教え、絶対に油断しないことを伝えてのぞむ。

 ・・・なのに。

 ・・・・それなのに。

 監督が全力で勝ちに行こうとしているのに、選手は全力でプレーしなかった。

 相手の出方や技術がわかり始めた途端、選手は全力に見合うパフォーマンスをとりやめました。

 「なぜ自分たちがあえてこの試合に起用されているのか」を忘れて、実のないプレーを連発。

 まだ試合の前半にもかかわらず、だ。

 それでも試合に勝てばマシなのだが、信じられないことに負けてしまった。

 奇跡を起こそうとしているチームが、自分たちでその勢いを放棄するようなサッカーをして負けた。

 このような光景にラモス監督は、「前半で既に負けが決まっていた」と表現し、そして最後に「自分たちに負けたゲームだった」と判断したのではないでしょうか。

 断っておきますが、今回の敗戦の責任はラモス監督にあります。チームの監督なのだから、それは当たり前のこと。しかし、監督が全力で勝とうとしているにもかかわらず、前半途中の段階から全力とは思えないプレーを始めた一部の選手にも問題はあったと思います。少なくとも、負けてる局面での選手交代で、ゆっくりゆっくりと歩いていた選手の姿勢を、僕は認めたくない。

 こんな結果で天皇杯が終わりました・・・・本当に悔しくてたまりません。