私がインターナショナルスクールの教員に始めて就いたのは20年以上前になります。

 

その頃の帰国生受験は今とは比較にならないくらい有利な受験制度でした。

 

それこそ、日本の高校で学び一般受験をしたのならばどこの大学にも受からないのではと思えるような生徒が早稲田、上智、GMARCH,関関同立にすんなりと合格を得ていました。

 

帰国生が珍しい或いは帰国生が多い大学がプライオリティが高いイメージを持たれる時期であったのかもしれません。

 

ところが、この5,6年は大きく状況が変わってきました。

それはほとんどの大学で総合入試を導入したことにあります。

 

特にこの1-2年は円安のために大量に駐在員が帰国している状況が重なり帰国生にとっての大学受験状況は以前よりも格段に厳しくなっています。

 

一般入試は高校で勉強をした内容をオウム返しにコピペした解答で合格を得るシステムです。

しかし、それでは知識を本当に研究などに役立てることが出来る資質が生徒にあるのかはわかりません。

 

そこで急ピッチで大学が総合入試を導入するに至ります。

総合入試も大学レベルによりピンキリですが、ある程度のレベルになると受験生の「地頭(じあたま)の良さ」を見抜くシステムを導入してます。

 

小論文や面接、口頭試問では高校の学習指導要領にはない内容の試問が課されることも多くなっています。

高校時代を通じて社会と関りを持ち自分が受験する学部学科との整合性を見抜く内容も多くなっており「自分の将来の夢」を語るような内容での合格を得ることは困難になっている状況です。

 

大学は研究機関です。

大学で研究を続けられるのかを高校時代からの活動から証明する必要もあります。

受験する学部学科に関わる社会問題やその解決への行動を起こしたことがあるのか?関係する活動や研究を高校時代から行っているのかなども問われます。

 

現在、大学を受験する生徒数は年間約65万人です。

その中には学校の勉強はそこそこであっても考えて行動してきた「地頭(じあたま)が良い」生徒が一定数います。

 

現在の帰国生受験は総合入試の一部と考えて下さい。

帰国生は従来は存在しなかったそのような「地頭(じあたま)が良い」生徒達と受験を戦わなければならない状況となっています。

 

帰国生生徒の中でもシンガポールに在住していた生徒はシンガポーリアンの一人として町を自由に行動しています。

現地の方々と普通に交わることもでき公用語の一つが英語のためTOEFL100点以上を有する帰国生が一般的です。

また、国も小さいために社会状況を体験的に理解している生徒が多いのも特徴です。

 

しかし、海外に住んでいるとその国の社会と関わり交わることは意外と少ないのが現状です。

英語も学校で使っているだけの場合は飛躍的に英語力が伸びることは難しいのが現実です。

但し、英会話能力は英語(国語)の学力とは別ですので2年間以上を英語で学ぶインターナショナルスクールで過ごしていれば日常英会話には困らないレベルに達します。

 

また、外出も安全を守るために制限される場合もあり、階級社会やそれに近い社会状況の国で暮らしている場合には自分たちが所属する社会階層以外の方々との関わり合いも少ないのが現状です。

 

そのような場合には海外で暮らしていてもその国の現状さえ知らない生徒も多く帰国生入試での合格レベルも過去に比べて低くなっているようです。

 

タイに暮らす日本人生徒はタイで日常的にテロ事件が起きていることを知らない場合も多く、隣国のミャンマーで起きている社会状況を理解していない生徒が多いのも現実です。

その理由は、バンコクのインターナショナルスクールを例にとれば年間の学費は日本円で約500万円、タイの物価に読み替えれば1,200万円~1,500万円とタイ人生徒は富裕層のみに限られています。

 

それらの学校では世界中から修士号、博士号を取得している先生が教鞭をとり将来のエリートを育成しています。

 

又、そのようなインターナショナルスクールではタイやタイに関係する近隣諸国のセンシティブな政治や社会問題にはほとんど触れません。

 

タイでは2023年だけでも平均で毎月7件のテロ事件が発生していますが、その事実を知る日本人生徒はほとんどいません。

今年の10月にはイスラム過激派による爆弾テロが複数個所で行われ多くの方が負傷し、11月には町長が武装勢力に襲われ殺害されたり、今月にはミャンマーの軍船にタイ漁船が銃撃を受け一人が死亡、31人がミャンマー軍に拘束された事件も起きています。

 

だが、このような問題も特権階級には蚊帳の外の事件でしかなく日本人生徒たちにタイの政情や社会不安の事実認識が共有されることはありません。

 

最近の帰国生入試では、帰国生たる知識とそれに対する応用や知見を求める大学が増えています。

年間約65万人の大学受験生には将来、国や大企業をけん引する能力を有する生徒も少なからず存在します。

 

帰国生受験や総合入試を目指す生徒さんは社会にアンテナを張り知見から対策を行える能力育成を心がけてください。

 

そして、行動力を大学に証明できる志望動機理由書、小論文、面接(口頭試問)を発信できるよう学習指導要領にはない知識と応用力を身につけましょう!