いつも楽しく読んでるIWGPシリーズの6作目。

石田衣良を読み始めて5年くらいになるだろうか。はじめの頃は物語は面白いし、表現は新しく多彩で読んでて楽しいのは間違いないけど、石田ってごくたまに出てるテレビからは、「才能あるし成功してるし男前だしなんだかカッコつけてるぞ」ってなイメージが伝わってて、あんまり好きになれてなかったのです。でも物語を読めば読むほど幅広いジャンルと深く深く丁寧な描写の素直なファンになってたのです。前作を読むまでにはね。そしてこの物語を読んで、というか巻末の解説を読んで「どうりでシンクロするはずやわ。だから面白いんだ」と確信しました。というのも、解説を担当された吉田伸子さんへ石田衣良がある時言ったそうです。「自分は家で仕事しているんだから家事も育児も手伝うのは当たり前じゃないですか」だって。石田衣良の男前で才能があって成功してる人だからってイメージだけで、私は勝手に石田さんがこんな人じゃないと思ってた。だけどこんな台詞をいう人なんだから悪い人なワケがないのだ。今後は自信を持って石田好きだと意思表示しよう。ということに気付いたいい作品でした。


今回もとてもたくさんある私に響いた文章。石田と道尾は特に言葉の引き出しが増えてくのが実感できるよ。


「自分が女子高生だってだけで、いい値がつくと思ってる。足太いのに、スカート短くしちゃってさ。あれはみんな大人の男が悪いんだよ。若いってだけで、ちやほやしてさ」


長い冬が終わった。それだけで全世界に感謝をささげたくなる。地球よ好転してくれて、ありがとう。


確かに棒でなぐれば犬はいうことをきくようになるだろう。だが、そんなふうにしつけられた犬は、別などこかで人をかむようになる。


すでに満腹感はK点を越えている。


地上最強なんて格闘技の中継をきくと、おれは今でも笑ってしまう。あんなものはまだまだ底が浅い。おれは地上最強の笑顔を見たことがあるんだからな。


春がまためぐってくるように、おれたちの心には自分自身の傷を修復しようとする自然の治癒力があるはずなのだ。そうでなければ、心なんて不便なものを、誰が一生持って歩くというのだろうか。


生物は季節にだけは逆らえないようにつくられている。それは満開のサクラも、花の枝を飛びまわる小鳥たちも、このおれやあんただってきっと変わらないはずだ。


頭のいい女は、みんなセクシーである。

いつもここで紹介している宝島のこのミス系。

私にとっては初めての選挙モノでした。このジャンルって他にもあるのかな?あるなら読んでみたいと思いましたよ。


今回の私に響いた文章

「歴史…そのすべての場面は、誰かの決意と決断で彩られている」

道尾得意のどんでん返し系。途中「うそやろ、こんな昭和な古典的なメイントリックじゃないよな!」と一瞬疑いましたけど、、、

相変わらず巧い。巧いって書くより「ウマい」って感じ。


今回の私に響いた文章


葬式の描写


空気が、ひどく濃密で、手で触れることができるのではないかというほどの哀しみに満ちている。

中学校の頃「ぼくらシリーズ」で大変お世話になった宗田さんを約20年ぶりに読んだ。20年前と感じ方がどう変わってるだろうとワクワクして読み始めたものの、この作品は「ぼくら」と全く毛色が違ってました。どころか正反対。最初から最後までドヨーンと暗ーい雰囲気のまま、最初から最後まで救いのない物語。

娯楽小説としてはこれはナシです。教育書、問題提起書だな。

私の中で別格の東野圭吾。本を書いてくれるだけで感謝します。読めるだけで感謝します。

ただ、今回の物語はやや物足りなかったかな。

高校・大学時代に読みまくった原田宗典の妹なのです。この方。その経歴だけでも私にとってはかなり興味深いのに、宝島社の第一回日本ラブストーリー大賞受賞作だからずっとずっと前からチェックしてたんだけど、ラブストーリーってのがネックになってて今の今まで読んでなかったんだけど。。。

私は本を読んでまで切ない思いをしたくないので、ラブストーリーにありがちな起承転結の「転」は要らないと思います。

ストロベリーナイトの続編。警察って組織も前作よりはマシかもって程度には見直した。

パニックアクションと呼べばよいのか、これまた謀略サスペンスと呼べばよいのか、いずれにせよ高嶋さんの面白さが発揮されるジャンル。おもしれぇよ。ハズレに出会ったことないよ。

高嶋さん、もっと読みます。


今回の私に響いた文章


人生は長い。思い悩むことも人としての特権だ。

男子高校生とはこんなもんか?

恩田さんと私の認識には溝がある。


今回の私に響いた文章


雪が降っている状態を最初に「しんしんと」と表現したのは誰だろう。これほどぴったりな描写を思いついた奴は天才に違いない。


「おまえ、素質あるぞ。マイケル・チャン並みの反射神経だ」


シンプルな横一直線の土手と並行した地平線に、ナイフで切れ目を入れたかのような光が輝きはじめていた。

宝島のこのミス系。

この人は面白いわ。ますます注目度が上がった。これで読んだのは3作品目ですけど、それぞれプロ野球選手、プロ囲碁棋士、ピアニストってな風に絶対現実の私には触れられない舞台での人物や物語が描かれていて、こういうのに触れられることこそ私にとっての娯楽読書の理由ですからね。

水原さん、ほかにも政治モノや裁判モノもあるみたいなので、絶対読みます。

あと、表現の美しさでは石田衣良とか伊坂幸太郎に唸らせられることが多いけど、この作品では久々に素晴らしい描写に出会いました。

そんな今日の私に響いた文章。


(ピアニストが弾くショパンの音を文章で表現している一節)

左右の指で違うハーモニー、左は不協和音、右は協和音。左手と右手が絶妙に交錯し、ひそやかにクルクルと動いてやがてそれが美しく溶け合う。細い音符が高域できらめく時の粒だつ色彩感。パッセージの細部の一音一音まで切れのよい精巧な造形力。

この表現の前後に直喩を使ってダイレクトな想像をかきたてる表現も使われているけど、この部分は形容詞を使わず比喩も使わず、でもその音の美しさが文字でしっかり伝わってきました。

このクライマックスシーンの2-3ページは読む価値がありました。ページ全部に傍線引いて傍点を振って蛍光ペンを引きたいくらい。

こういう文章を読むために小説家が書く小説を買ってるんだなぁと思わせてもらえたいい作品でした。