気がつくと… | 明日が欲しい

気がつくと…

気がつくと、いつもこうしている。

僕は考え事する時はいつも机に足をかけて体育座りに頭を丸め込む。


「これからどうしよう?」

窓の外を見ると雲に見え隠れする三日月がフワフワ揺れていた。





時間は1年半までさかのぼる。


時は2004年3月。


札幌の高校を卒業してから、「映画俳優になる!」って宣言して東京練馬区に引っ越した。

地元にいる時に応募した芸能プロダクションの養成所に合格してたので

4月から通うことになる。


【トリックプロモーション】僕がいつか所属する予定の事務所だ。

ここには最近ドラマに引っ張りだこの【永山博】やバラエティやCMでよく見る【岸田由美子】が所属している。


でも何より一番の憧れは【哲司】だ。


最近勢いを失っている日本の映画界を引っ張っている若手のホープ。

この前は日中合作の映画にも主演している。

雑誌のインタビューや映画の舞台挨拶などで話す内容は哲学的て理論的。

なのにスクリーンでは背中がゾクゾクして鳥肌が立つような演技をする【哲司】に僕は憧れていた。



僕は夢を見ていたんだ。

芸能界は華やかな反面裏では汚いことだらけな事に気づくのに

そう時間はかからなかった。




4月。

ボロいアパートを飛び出して僕は今日初めて養成所に通う。

まだ池袋しか行ったことなかった僕にとって新宿はなんだか怖い。

駅の中だけでも迷子になりそうなのを必死にもがいて東口を出た。


そして歩くこと15分。

ようやく着いた。【スタジオトリック】


「…ここだよな?」

うん、地図もバッチリここだし、何より【スタジオトリック】が目的地を指している。


「やけにさびれてるっつーか、ショボイな…。」

誰が見てもそう思うだろう。

外は汚いチラシがベタベタ張ってあるし、看板も半分錆びててよく読めない。

でも行くしかないしとりあえず入ってみる事にした。



「すいませ~ん、今日から入ります山中健一です。」

薄っぺらいドアを開けると30畳ぐらいの低い天井の部屋だった。

でも熱気がムンムンとしてたんだ。


中には20人くらいはいるだろうか?

みんな一斉にこっちを見る。そして「おはようございますっ!」


ドキっとした。あっ、そうか芸能界はあいさつは「おはようございます」だった。

慌てて「おはようございます」と言った。


みんなはジャージ姿でストレッチや発声練習をしている。

自分もまずは着替えなくてはと思い、更衣室を探していると後頭部と叩かれた。


「おっせーんだよ!このたわけっ!オレより遅いって舐めてんのかっ!」


そこには小太りの角刈りが仁王立ちしていた…。