駅のホームがするすると動き始めるのを車窓から見ていた。
たまに妄想の旅をする。
今見えているのは普段の通勤電車からの眺めではなくどこか遠くの町の風景であり、私は今ひとり旅の途中にいる。
そう思うとなんともいえない感覚が沸き起こってくる。
停車駅で乗り込んでくる人々はその地元の住民で、方言が周囲を満たす。
ひとり異邦人である私は少し寂しく、しかしある種の懐かしさを覚えながら列車の中の空気を楽しんでいる。
自分自身を錯覚の中に放り込むようなひとり遊び。
梶井基次郎の作品を読んだ時に共感したのは主にこの感覚が根底に流れていたからかもしれない。
たまった本を整理していたら梶井の本を見つけた。
久しぶりに文学作品も読んでみようかな。