
『無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか?』というやけに長いタイトルの本を読んだ。
レビュープラスさんからの献本である。
最近、こうした長めのタイトルの本をよく見かけるが、流行なのだろうか。それも主にビジネス関連の書籍に多いような気がする。
それに、質問というか問いかけというか、そういうスタイルのタイトルもよくある。古いものでは内村鑑三の『余は如何にして基督信徒となりし乎』というのもあった。まあ内村鑑三は本書には特に関係ないが。
個人的にはこういうスタイルのネーミングはあまり興味を引かれないが、世間一般的にはどうなのだろうか。
そもそも無印良品は飛ぶように売れているのだろうか。最近買ったおれの財布は確かに無印良品だが。
▲(しかもあまり興味ないなどと書いておきながら、似たようなスタイルのタイトルまでつけていた。)
まあこれは余談に過ぎない。重要なのはレビューだ。
ざっくりいうと、本書は「コンセプト」というものについて書かれた書物である。タイトルにもある「無印良品」は、そのコンセプトの重要性を分かりやすく伝えるためのシンボルみたいなもので、決して無印良品のパンフレットではない。
あとがきで著者はこう語っている。
『そして、ある時、気づいたのです。
日本には問題への対処の意見や議論はあるが、どんな国になるべきか、どのような未来を我々は目指すべきかというもっとも根本的な議論が欠けていることに。
つまり、コンセプトとグランドプランが、この国にはなかったのです。』p244
衝撃的と言えば衝撃的なあとがきである。そして、常識的と言えば常識的なあとがきでもある。
いずれにせよ、我々は、「コンセプトとグランドプランのない国」に住んでいるということだ。それはほぼ間違いない。
と、いうことはつまり、あれである。
つまり、本書はビジネスマンに向けられただけではなく、日本語が読解できる、「日本人」すべてに向けて書かれた今の日本人への「柔らかな檄」である。
あなたは、まず、「無印良品のあれ」とか「飛ぶように売れる」という何やらわからないタイトルにつられて本書を開き、何か自分のビジネスの参考になる情報があるかもと下心、いや向学心を抱きつつページをめくるかもしれない。
しかし、最後のページを閉じる時、あなたは、これまでのあなた自身を振り返りつつ、ビジネス以前に、人生にはコンセプトとグランドプランが必要なのだということを痛感するだろう。痛感とまではいかなくても多少はその大切さが分かるだろう。分かって下さい。
かつてアナーキーは、流行に流されるだけの若者を「あっちへフラフラ、フラメンコ。こっちへヨロヨロ、ヨーロピアン」と皮肉ったものだが、今や国を挙げて迷走している感のあるわれわれ日本人に、この『無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか?』に書かれてあることは遠からず必須の知識となるであろう。
そしてこの「知識」をモノにしたあなたは、やがてあなた自身の「航海」に出てみたくなるだろう。
無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか?/江上 隆夫

¥1,470
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内容紹介
ヒットの秘密はコンセプトが9割!
優れたコンセプトは時に数千億の利益を生み出し、世界を変えていく。
本書は第一線で活躍する気鋭のブランド・コンサルタントが、
無印良品、富士フイルム、スターバックス等の実例を紹介しながら、
企業や商品の価値を最大化するコンセプトのつくり方を伝授する。
プロローグ 無印良品はコンセプトがすごい
Part1. 知る
第一章 なぜ私たち日本人はコンセプトを使いこなせないのか
第二章 コンセプトと失ったものを取り戻す方法
第三章 コンセプトをつくる前に知っておくべき7つのこと
Part2. つくる
第四章 現在地を把握して、資産の棚卸をする
第五章 最高のコンセプトのつくり方
Part3. 使う
第六章 コンセプトの使い方
あとがき