気合いは、身体の構造上、
手技においても足技においても
押し出す動き及び引き寄せる
動きと大きくかかわっています。
突きっ放し、蹴りっ放しというものは、
言葉としての表現があり、
意識としても大事なところではありますが、
現実的には、重力のかかっている地上において、
身体から手足が離脱していかない以上、
あり得ません。
むろん、空手道に限らず、
動きを伴うものすべてに共通しています。
その押し出す動き、
引き寄せる動きをコントロールして
効果を最大に高めるのが、気合いです。
気合いには、2つの意味があります。
1つは、全力を出すこと。
準備から完了までの一連の手順、
動きを凝縮したものが気合いに現れます。
もう1つは、息を整えること。
次の2つを試してみると、どうでしょう。
息を吐かずに、声を出す。
「あ」でも「え」でも構いません。
音楽の先生などからもよく指摘される、
口だけで声を出している、という状態です。
腹式呼吸で、息を吐きながら声を出すものとは
明らかに異なることがよく分かるはず。
声は、息を吐かなくても
音を出すことができるのです。
もう1つ。
空手道やボクシングのように拳を突き出します。
そのワンテンポ前に
気合いを入れてから突き出してみてください。
??? 何か違うように感じませんか。
拳を突き出したワンテンポあとに
気合いを入れる身体の動きとは
全く異なるのです。
最適な間合いで気合いを入れることが、
全力を出すことと、息を整えることにつながります。
この一見、相反するようなことが、
気合いによって成り立つのです。
気合いとは、つまり、呼吸です。
指導者やインストラクターは、
指揮をとり、号令をかける役割があります。
必然的に、意識的に呼吸をする機会が
メンバーよりも圧倒的に多い。
そのため、同じ空間で同じ動きをしていても、
インストラクターとメンバーとでは、
疲労するペースが異なります。
経験を積んでいる指導者やインストラクターは、
指揮をとりながら、号令をかけながら、
すべてを整えている。
それほどに、修練された呼吸は
劇的な差を生じさせるものなのです。
追記
これまで、空手道場に限らず、
いろいろな道場で耳にしてきた気合いは、
いくつもあります。
「エイッ」「ヤアッ」「ハッ」「ハイッ」
「アイッ」「セイヤッ」「サー」「ソー」
「シュッ」「キエャ〇▲□※」
さすがに、
「トリャー」とか「ソリャー」というのは
なかったでしょうか。
道場内で統一しているところもあれば、
各人各様のところもありますが、
浅草時代からの剛柔流の諸先輩方に倣い、
私たちは「エイッ」であり、
「エ」で始め、「イ」で締める効果は、
たいへん高いものがあると考えています。
なお、前述の気合い等々は、
剛柔流空手道というよりは、
空手道の他流派や元プロのキックボクサーなど
他分野の方々と
普段とは異なる稽古をする際に考える
きっかけをいただいていることが多い。
キックボクシングでは、
身体をねじ込むように
ほぼすべての体重をかけてキックを打ち込みます。
目の前の相手やサンドバッグが
ストッパーの役目となるため、
引き寄せる必要性は、
かなり小さいものとなる。
気合いも「シュッ」というように、
より瞬間的で短いものとなる傾向にあるのです。
年齢を重ねるごとに、
呼吸というものの大切さを意識する機会が
増えてきました。
身体の動き、呼吸という視点で、
またいずれ考察してみたいと思います。
