今日、家に帰ろうとしたとき、乗り換えた電車の中でKちゃんを見た。
数ヶ月前に、電車の中で会って以来だ。
あの時
は、数メートル前にいたのに、何も話せなかったっけ。
でも、今日は違った。
途中の駅から、Kちゃんの隣が空いたのだ。
そこで自分は、その席に座った。
自分にとっては、高校のとき以来、3年ぶりになると思う。
自分は終点の1つ前の駅まで乗るけど、あいつは自分よりも先に降りる。
いっしょに乗っているこの数分間が、自分にとってはとても嬉しかった。
ただ、Kちゃんは何を考えていたんだろう?
一心不乱にボールペンで絵を描いていた。
時々、携帯の着信音に反応することがあったほかは、全く気づいていなかった。
何を考えていたんだろう?
自分の中では、過去の思い出が瞬時によみがえってきた。
掃除での出来事、電車の中での思い出、文化祭でのこと、2学期最後の日、そしてあの悪事…
自分はKちゃんに謝らなくてはならなかった。
ただ、時は過ぎていった。
そして、Kちゃんが降りる駅に着いた。
降りる前にKちゃんは、自分に頭を下げていってくれた。
自分も頭を下げた。
高校生の頃とは変わっていなかった。
あの頃の、まじめで腰が低くて、そしてかわいいKちゃんがいてよかった。
今日も話しかけることができなかったけど、今日は何だか嬉しいように感じた。
少しずつ、Kちゃんと自分の中にある“見えない壁”を取り除いていきたい。