怒りの心がわいたら、どうすれば良いのでしょうか?

具体的な方法について、今日は、こんな話を紹介します。

「禍いと苦難を避ける方法を教えよう。それは、ただ『堪忍』の一句である」

一人の男が、高僧から、こう伝授された。高僧は続ける。

「これは、と思う急な時には、まず『堪忍、堪忍』と唱えて、後ろへ3歩下がりなさい。

 決して、そのまま前へ進んで、カッとなって思ったとおりのことをしてはなりませんよ」

 男は、頭を下げて聞いていたが、心の中ではバカバカしくてならない。

「その程度のこと」と、信じようともしなかった。

 それから6年たった、ある日のことである。

 彼は、久しぶりに故郷へ帰った。我が家に着いたのは、もう夜更けであったが、中からは明かりがもれていた。

「おかしいぞ、こんなに遅くに……」

 戸の隙間から、そっと中をのぞくと、妻が立って仕事をしている。

 ところが、その側には、頭巾をかぶって顔を隠した男がいるではないか。妻と、仲むつまじく話をしている。

「さては、浮気しているな! おのれ!」

 彼は烈火のごとく怒りを発し、短刀に手をかけた。

 この時、ふいに、6年前の高僧の言葉、

「忍び難き場面に直面したら、『堪忍』と唱えて、3歩下がりなさい」

を思い出したのである。

「堪忍、堪忍」と言って、後ろへ3歩下がると、

「急ぐな、今、やつらを殺せば、我が身は、殺人罪。もうこの家にはおれない。親や子供は、どんな思いをするか……」

と思えてきた。

 彼は、心を静めて、家の戸をたたいた。

 すると、頭巾で顔を隠していた男が、すぐに戸を開けに来て、

「婿殿、今、帰ったのか」

と、満面の笑みで迎えてくれる。

 頭巾を取った姿は、男ではなく、妻の母であったのだ。

 母は笑って言う。

「少しでも生活費を稼ごうと、夜なべ仕事を始めたんです。

 でも、夜は、女だけではぶっそうなので、私が男に変装して、この家を守っていたんですよ」

 彼は、大地にひれ伏して、

「ああ、『堪忍』の一句がなければ、俺は今ごろ、妻と母を殺していたんだ。

 恐ろしい結果になるところであった。浅はかであった……」

と、泣いて懺悔するのであった。

(1万年堂出版『こころの道』より)

本の中に教えられていた話です。

イギリスのことわざに「腹が立ったら、100数えよ」とあります。

アメリカの3代大統領のトマス・ジェファーソンは、

「腹が立ったら、何か言ったり、したりする前に10まで数えよ。
 それでも怒りがおさまらなかったら100まで数えよ。
 それでもダメなら1000まで数えよ」

と言っています。

日本のことわざにも、「一朝の怒りに、一生を過つ」と戒められています。

「堪忍」は「こらえしのぶ」ということですから、腹が立ったときは“忍耐”が大事ということを、よく心得ておきたいものだなぁ、と思いました。

(*^-^)