昨晩、富山から車で岡山に帰ってきました。


3連休の中日だったからか、車は混んでいませんでした。
ガソリン代が高いので、車で移動する人は少ないのかな?と思いました。


方言の内容に、たくさんの声をいただき、感謝です♪
方言の方が微妙なニュアンスが伝わる表現が多いように感じます。


さてさて、芥川龍之介『杜子春(とししゅん)』、続きがどうなるのか気になるところですね。
ちょっと長いのですが、最後まで読んでいただきましょう。

どんな結末だったか…。


・・・


杜子春を岩の上に座らせて、老人は、厳しく言いつけた。


「いろいろな魔性が現れて、おまえをたぶらかそうとするだろうが、たとえどんなことが起ころうとも、決して声を出すのではないぞ。
 もし一言でもしゃべったら、おまえは到底仙人にはなれないものと覚悟しろ。
 よいか。天地が裂けても、黙っているのだぞ」


「決して声なぞは出しません。命がなくなっても、黙っています」

杜子春は誓った。

やがて、彼の前に、虎や大蛇などが現れ、

「そこにいるのは何者だ。返事をしないと命はないぞ」

と脅迫してきた。沈黙を守る杜子春は殺されて、地獄の底へ落ちていく。

閻魔(えんま)大王は、雷のような声で

「こら、その方は何のために、峨眉山(がびざん)の上で座っていた!」

と怒鳴りつけた。しかし、杜子春は返事をしない。

怒った閻魔は、剣の山や炎の谷など、あらゆる地獄の責め苦を与えたが、彼は、一言も口をきかなかった。

あきれた閻魔大王、

「この男の父母は、畜生道に落ちているはずだから、早速ここへ引き立ててこい」

と鬼に命じた。

間もなく連れてこられた二匹のやせ馬を見て、杜子春は、肝がつぶれるほど驚いた。
姿形は馬でも、顔は夢にも忘れない、死んだ父母ではないか。

閻魔は叫ぶ。

「こら、その方は何のために、峨眉山の上に座っていたのだ。
 白状しなければ、今度はその方の父母に痛い思いをさせてやるぞ」


脅されても、杜子春は返事をしない。


「この不孝者めが。その方は父母が苦しんでも、自分さえ都合がよければ、いいと思っているのだな」


鬼どもは鉄のムチで、二匹の馬を容赦なく打ちのめし始めた。
ムチはりゅうりゅうと風を切って、所嫌わず雨のように、馬の皮肉を打ち破る。

馬になった父母は、身もだえして、血の涙を浮かべ、苦しそうにうめいている。
とても見ていられない。


「どうだ。まだ白状しないか」

閻魔大王が杜子春に言った時には、二匹の馬(父母)は、肉が裂け骨は砕けて、息も絶え絶えであった。

杜子春は、必死に、老人との約束を守ろうとして、固く目をつぶっていた。

するとその時、彼の耳に、ほとんど声とはいえないほどの、かすかな声が伝わってきた。


「心配しなくていいんだよ。
 私たちはどうなっても、おまえさえ幸せになれるのなら、それより結構なことはないのだからね。
 大王が何とおっしゃっても、言いたくないことは黙っていていいんだよ」


それは確かに懐かしい、母の声に違いなかった。杜子春は思わず、目を開けた。

母は力なく地上に倒れたまま、悲しそうに彼の顔へじっと目をやっている。

母はこんな苦しみの中にも、息子の心を思いやって、鬼どものムチに打たれたことを、恨む気色さえも見せない。

大金持ちになればお世辞を言い、貧乏人になれば口も聞かない世間の人に比べると、何というありがたい志だろうか。

何という、けなげな決心だろうか。杜子春は老人の戒めも忘れて、転ぶようにその側へ走り寄ると、
両手に半死の馬の首を抱いて、はらはらと涙を落としながら、「お母さん」と一声叫んだ。

杜子春は、夢が覚めたように、夕日を浴びた都の西の門の下に、ぼんやりたたずんでいた。
すべてが峨眉山へ行く前と同じであった。

老人は厳かな顔で、杜子春に言った。

「もしおまえが、ムチを受けている父母を見ても黙っていたら、俺は即座におまえの命を絶ってしまおうと思っていたのだ―」


・・・・・・・・・・


果たして、この物語は、子供向けに書かれたものなのでしょうか?

二匹の馬を、「親の心」に置き換えてみる。
親の心に、鉄のムチを振るってきたののは誰なのでしょう。

親の心が泣いているのに、目をつぶってきたのは誰なのか。

皮が破れ、骨が砕けるような仕打ちを受けても、

「おまえさえ幸せになれるなら」

とほほえんでくださる方が、「親」以外にあるでしょうか。


『杜子春』は、本当は怖い話なのです。
見たくもない己の心の姿を、芥川は、描き出したに違いありません。

閻魔大王の叱責は、まさに、わが身に向けられているようです。


「この不孝者めが。
 おまえは父母が苦しんでも、自分さえ都合がよければ、いいと思っているのだな」


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発行人:Hidekuni Moriyasu

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