スキー・スノーボード連盟の役員をしている関係で、ある一人のアスリートに出会った。
高校2年生のGさんだ。
競技はあの高梨沙羅さんと同じスキージャンプである。
彼女は兵庫県神戸生まれだったが中学時代を北海道下川町で過ごした。
下川町といえば、葛西紀明さんとか、伊藤有希さんとか、ジャンプの名だたるアスリートを輩出する町である。
高校の途中まで過ごしたが、事情により兵庫県に戻ってきた。
今年から兵庫県スキー・スノーボード連盟所属として活動することになる。
兵庫県にはジャンプ台がない。というか、全国でもジャンプ台は数えるほどしかない。
しかし彼女は兵庫県でスキージャンプを続けることを選んだ。
競技者にとって、実践を積み重ねるということはとても重要だ。
だが、北海道や長野のジャンプ台に行ってしか実践を積むことができないのだ。
だから、最初から不利な条件で戦わなくてはいけないのだ。
スキーに限らず、何かのスポーツを行うのに環境は重要だ。
兵庫県出身の有名アスリートは数多いが、最近最も注目を浴びているアスリートの一人にフィギュアスケートの坂本花織選手がいる。
神戸には、もともとポートアイランドのワールド記念ホールがあったが、近頃、もう一つスケートリンクが誕生した。
このスケートリンクは、年中営業を行っているので、365日スケートが滑れる環境にある。
スケートはウインタースポーツの中でも一際注目を集める競技だけど、実のところ、スケートリンクは都市部にあり、出身者はほぼ、都市在住者に限られている。
彼女は次のオリンピックまでは選手として続けると先日メディアで発表があった。そして、新しいスケートリンクができて、世界で戦える環境が整ったとも語った。
坂本選手が努力を積み重ねて今の地位を手に入れたことは間違いなく、その努力には敬意を表するが、彼女の周りに利用できるスケートリンクがなければ、到底オリンピックのメダルなどをとることなどできない。
それだけスポーツ選手にとっては外部環境はとても重要である。
それらの『環境』を手に入れるために努力を惜しまないことも大事だが、もし仮に環境が手に入らなかったからといって、彼らのアスリートととしての価値が本来はそれで減るわけではない。
むしろ、そんな不利な状況の中でも自分ができる精一杯の努力をしていることにこそ賛辞を贈らなければならない。
そしてそこには、メジャーなスポーツもマイナーなスポーツもないはずだ。
もっと私たちがそのことをしっかりと見るべきである。
Gさんがどれくらい花開くか分からないが、彼女の新たな挑戦を応援していきたいと思う。