私自身は、働くということに関しては、ものすごく古い考えを踏襲していると思います。
昨今、キャリアアップのために、転職するのは当たり前な世の中なのですが、私自身は、そこにはあまり感心しません。
私自身も会社を率いる中で、常に問いかけているのは、その人が永続的に勤められるにはどうあればいいのか?ということです。
会社は、常に業績をあげることが求められていて、その肝心かなめは人であるわけですが、そのために優秀な人材を獲得していくのは、もっともプライオリティの高い問題です。
一方働く人は、自分の実力を、しっかりと評価してくれ、どんどんとキャリアアップしていくため、渡り歩くという考えもあるだろうし、そこは否定はしません。
ですが、『信頼』という点でいうと、1年の人と、10年の人ではさて、どちらが信頼がおけるのかといえば、私はやはり長く付き合った人のほうが信頼がおけると思います。
だから、長く務めるというのは、そういう意味でとても重要だと思うのです。
私にはこんな経験があります。
社員も人だし、私も人です。ときにけんか腰のように意見が対立したり分かり合えなかったりすることがあって、こんな社員辞めてしまえばいいのに…と思ったことは一度や二度ではありません。
私自身は、会社の中で人事権を有しているので、ほんとうに理解しあえないとなれば、辞めさせることができる立場にあります。
ですが、そこで思いとどまってきました。
人はいいところもあるし、悪いところもあります。悪いところばかりを見てしまえばどんどんと気持ちがそっちに傾注してしまいます。
なんとかそこで気持ちをコントールしていけば、しばらくたてば、そういったほとぼりも冷めてしまい、もとに戻っていきます。
で、やはり長く勤めてくれた人はそういう素性もわかってくるから、一定の安心感というのはやはりあるわけで、それこそが信頼の一つのかたちなのだと思うのです。
メディアでは、日本式のいわゆる終身雇用を軽んずる傾向にあります。ですが、私は、やはり永続する力というのは社員との関係でも大事で、私は日本的雇用形態は、それなりに意味のあることだと思っています。
社員との信頼、顧客との信頼、時間軸があるから、生まれてくるものもあるんだろうと私は思います。