都会の事情はよく知りませんが、昔から、地区(自治会)というのは、もっとも基本的なコミュニティの単位です。
その長たる区長は、半ば自己犠牲を払いながら、献身的に地区のために活動してくださっています。
行政も、区長には多くの業務を委託していて、例えば、行政が作成する広報を配布したり、農地の保全や利活用などでは、区長や、農会長といった地区ごとにおかれた長の印鑑をもらわなければいけないなど、行政上の立ち位置としても、かなり大きな重責を担っています。
しかし、たとえば、山林とか、そういた地区としての財産は、一旦は市町村で登記をされているようなケースがほとんどであり、法的な位置づけはとてもあいまいになっていることが多いのです。
昨今、防災意識の高まりにより、地区をあげての防災訓練が実施されるようになっています。
訓練のなかには、避難指示、あるいは避難勧告等が行われたさいには、避難場所へ移動し、安否確認をすることになっています。
以前は区民の名簿があって、自治会の長である区長はそういったことが把握されていたのですが、個人情報保護の観点からそういった名簿を行政から提供されなくなったというのです。
一緒に暮らしていた老人がある日突然、老人ホームで生活を余儀なくされたりするケースもあったりする場合もあるし、特に独居老人や老齢世帯などが増えたりして、常にそういった家庭と連絡が取れない場合もあるし、昨今は家族の形態もとても複雑化しています。
そういったことは、あくまで個人のことだから、知らせる必要がないというのもわからないでもないですが、ほんとうに地区民の幸せを願って活動している区長まで、知らされなければ、では実際のところどうやって安否確認などできるのでしょうか?
私は、そうやって献身的に活動している区長という立場を行政はとてもないがしろにしているのではないか…
そんなふうに思えてならないのです。
一生懸命地域を守ろうと活動している区長に対して、それがやりやすくしてあげてしかるべしなのではないかと思うわけです。
もし、個人情報の保護が必要というのであれば、区長に対して守秘義務契約などでも結んでおけばいいだけの話なのです。
行政のシステムと、これまで培ってきた地区の運営とが大きく乖離していることは大きな問題だと思います。
もし、地区がこのような活動をすべて放棄してしまったとしたら、行政はたちどころに困ってしまうはずです。
先の安否確認なども行政マン一人一人がやればいいだけの話になってしまいます。
ひょっとすると、日本全体をすべて一つのシステムでなりたっていると思うことに無理があるのではないかと思います。
田舎には田舎のルールやシステムが存在し、それがかなり地域の幸せのために有効に機能しているものがまだまだ多く存在します。
地区は、行政の下請けではありません。
もっとも基本的で強固なコミュニティであることを、国も行政もしっかりと認識する必要があるのではないでしょうか?