スキー場の特に宿泊業をやっている人が使う常套句があります。
「アクセスがよくなって、京阪神から日帰りできるようになったからお客さんが泊まらなくなったよ」
実は、私も最初はそう思ってました。
ですが、最近はそれは違うと思うようになりました。
ずばり!
日帰りスキー場にしてしまった張本人は、宿泊事業者自らだということです。
お客様を減らしてきたのは、泊まるに値するための価値を提供してこなかったからです。
私がバブル期を過ごしたのは、中学高校ぐらいだったと思います。
連日、多くのお客様が泊まられて、平日でもかなりの割合で満室になっていたことを覚えています。
宿泊のお客様のみならず、日帰りのお客様も相当数おられ、レンタルスキーの店を出せば、どんどんと皆さんが借りていただけました。
私も記憶にあるのですが、店の在庫が一本残らずなくなったこともありました。
商品は、数年使いまわしていましたから、それはそれはたくさん儲かっていたと思います。
なので、ハチ北内の民宿街の両脇には、レンタルスキーショップが軒を連ね、多くの店がレンタルスキーをするようになりました。
商品在庫をおいて、簡単な応対さえすれば、2000円、3000円と入ってくるわけですから、宿泊業のように、料理の準備をして、部屋の掃除をしてという手間から考えると、手軽にできたわけですね。
そういう時代を経験してしまったので、「宿泊」というものに対して、ずいぶんとおろそかになってしまった。次の時代に備えるための投資を怠った結果、宿泊施設としては時代からずいぶんと置き去りにされていった…
そういうことなんだと思うのです。
設備投資するだけの余力がなくなってしまい、かといってたくさんの借り入れをして設備リニューアルするのも相当及び腰になって、ハードとしての魅力は既に影も形もありません。
このまま手をこまねいているだけなら、どんどん疲弊し、建物も陳腐化するだけです。
今できることは、自分たちオーナーの人間力を高め、来ていただいたお客様に丁寧な接客をし、料理や体験といったハードに依存しない部分でやるべきことを徹底的にやっていくことです。
そしてファンを増やして蓄えをしていき、ようやくハードにも着手する…
そんなシナリオだろうと思います。
今や、お客様の方が快適な住空間を手に入れている時代です。
余暇を楽しむためにわざわざお金を払うのに、今の生活よりもランクが下がった宿に泊まるということはほんとはあっていいものだとは思いません。
だからハードももちろん大事。
ですが、今はソフトを徹底して磨いていくほかありません。
ハードをつくることを主な仕事をしている私があえて言うんですから、間違いありませんよ(笑)