ギッリギリと絞るように押し寄せる陣痛に、
痛゛だだだ、うぐおぉぉぉっ、と耐えながらも、
若干心が躍る。
やだ、どんだけ好奇心旺盛よ自分。
分娩台に上がり、NSTセット完了。
助産師 「ユトさん、赤ちゃん苦しそうだから腹式呼吸してね~、
陣痛きたら、息吐いてね~。」
腹式呼吸ならまかせてよ。
こうみえても学生時代は吹奏楽やってたし。
サキソフォン奏者だったし。
腹式呼吸、お安い御用ですからハッハッハー
えーと、
うん、ごめんなさい。
陣痛ナメてた。
あまりの子宮の収縮ップリと痛みに、
腹にコレッポッチも空気入れられないんですよ。
腹式呼吸は得意、と豪語した私が。
ユト 「ダメ…っす…っ…陣痛キツくて腹式ムリ…っす…痛゛だだだっ…」
そして私の言葉を聞いたドクターと助産師が、
何やらゴニョゴニョと話してます。
何?どしたの?
その間も陣痛に合わせるように、
絶えず股間から出てくる血。(見えないけど多分)
ドクター 「ユトさん、赤ちゃん苦しいみたいだから酸素吸入しますね~。
まだイキまないで逃してね~、はい、フーッフーッ…」
フーッ、フーッ…
苦しい?え?チビが!?
私の口と鼻を覆うように、プラスティックのマスクが。
そしてゴニョゴニョ話し続ける、ドクター&助産師。
陣痛に耐えるのが精一杯で内容はよく判らないけど、
若干聞き取れた部分が。
産道が通常より…
出血がチョット…
急ごうか…
うわーっ!
何か怖い単語聞こえた
ドクター 「ユトさん、破水させま…あ゛っ!」
瞬間、ナイスタイミングで自然破水。
バシャーッ!と勢いよく流れ出る羊水のおかげで、フ、と我に返る。
これが破水かぁ…、とテンション上がりかけた瞬間、
今まで以上のイキミがやってきた。
ユト 「痛゛だだだっ!ダメです!イキみたいですっ!!」
言い終えた瞬間、切りますね~の、声と共に、バチンと音が。
ドクターの手によって、会陰切開が施された模様。
助産師 「はい!イキんでいいよ!」
ユト 「ガッ…ッ!…痛゛だだだっ!いって
ドクター 「頑張って!ユトさん!ちょっと手伝いますね~」
と、私の腹の上からチビをギュムーッ!と押し出すドクター。
ユト 「痛゛…あっ!…ウンコ出そうです…ウンコッ!!」
助産師 「ウンコじゃないのユトさん!赤ちゃんだから!出して!!」
ユト 「え!?いや、ウンコですっ!!」
助産師 「ユトさん、赤ちゃんだからっ…」
この時ね、マジで、37歳にもなってウンコもらしそうになってる私を傷つけまいと、
助産師さんが優しい嘘を付いてくれてると思ってたんですよ。
私が恥ずかしい思いをしないように、優しい嘘を。
助産師 「ユトさん!出てきましたよ!」
ユト 「出たっ!?(何が!?ウンコ!?)(←心の声)」
助産師 「ハッハッハッハして下さい!」
ユト 「ハッハッハ…(産まれたの?マジ?)」
うん、マジで赤ちゃんだった。
12時51分
3480グラム、51センチのチビ。
やっとこ産道を通り抜け、この世デビューを果たす。
分娩所要時間6時間54分。
ドクターも驚く初産でのスピード出産。
表向きにはメッチャ安産。
果たしてその実態は…。
またつづく