「秋田屋」
ではあるが、
秋田にはない。
東京大門にある居酒屋だ。
焼き物をしている面は、
ビールのケースをテーブル代わりにして立ち食いのスタイル。(当然中にはテーブルもイスもある。)
サラリーマンと煙で歩道を埋め尽くす。
「くさや」を誰に気を使わなくとも注文できるオヤジたちの聖地だ。
もう何十年も前から変わらない雰囲気。
夕方4時には混み始め、
21時には閉店。
あっと言う間な居酒屋だ。
僕は中学生の頃、
帰り道ここの前を必ず歩く。
「こんな夕方から酒を交わし、大声で真っ赤な顔して…
オトナって…どなの?」なんて思ってた気がする。
ある時期、父はここの常連だった事があった。
常連すぎて、店員さんやら、お客さんからのあだ名は
「会長」と呼ばれていたっけ?
ほぼ記憶無しと断定出来るほどのその表情に、
「僕も何れはこの世界に足を踏み入れる事になるのか?」と。
「これは喜びなのか?解消なのか?依存なのか?」
そんな疑問だらけな中学生だった気がする。
先日、税理士の先生と打ち合わせの後、2人でのれんをくぐり、
くさやの香りを背中で嗅ぎ、
ビールを早々と喉に流した。
となりの常連そうなサラリーマンに、オススメの串物を伺い、
何の疑いも無しにそれを注文。
大正解。
上手い。
先生との宴も花が咲き、
やってしまった、幾つかの
記憶トビと翌朝の頭痛。
酒を嗜む事で獲た、多大なる交流。
普段では口に出来ない、何気ない本音。
中学生だったキミよ!
酒は悪いものじゃなかったよ。
あの頃毎日宴を交わしていた父は、今は一滴も酒を飲まない。
飲まないではなく、飲めないカラダになってしまった。
そんな父を可哀想とも思うが父は僕に言う。
「健康を気遣うより、
飲みたい時に飲んどけ!」と。
僕の30年後はどうなっているか…
楽しみだ。
多分、まだまだ、
嗜むと思うよ!
30年後のキミよ!