私の映画コレクションを紐解く三回目。
「クライマーズ・ハイ」
(2008年/日本)
【作品紹介】
走り、叫び、書いた。
新聞記事たちの激動の一週間。
群馬県、北関東新聞社。地元が現場となった航空機事故の全権デスクに任命されたのは、組織から一線を画した敏腕記者・悠木だった。
モラルとは?真実とは?新聞は<命の重さ>を問えるのか?
プレッシャーに押しつぶされながらも信念を通そうと必死にもがいた悠木が見たものは?
横山秀夫のベストセラー小説を、豪華キャストで描く社会はエンタテイメントの傑作。
監督/原田眞人
原作/横山秀夫
出演/堤真一、堺雅人、尾野真千子、遠藤憲一、高嶋政宏、でんでん、山﨑努他
145分
【レビュー】
原作者が地元新聞社の記者時代に遭遇した1985年8月12日の日航機墜落事故を題材にしたフィクションですが、当時のニュース映像を使用するなど忠実に時代考証されていて、歴史的な航空機事故が起きた直後の緊迫し混乱する新聞社の様子がリアリティーたっぷりに描かれてます。
前回取り上げた「ゾディアック」もそうですが、どうも私自身が新聞記者の話が大好きなのかも知れません。
この事故については当時高校一年生だった私の記憶も鮮明で、夜7時から放送されていたTBS「クイズ100人に聞きました」を観ながら夕食を摂ってる時に、画面に「羽田空港を飛び立ったJAL123便がレーダーから消息を絶った」という内容のニュース速報が流れ、ジャンボが消えた?落ちたのか?と何が起こったのか不明な状態がしばらく続いたのを覚えています。
その後、航空機は予定のコースを大きく外れた群馬県多野郡上野村の御巣鷹の尾根に墜落したことが判明しますが、夜間ということもあり墜落現場が何処なのかを特定して救助活動にあたるまで、かなりの時間を要します。
そして翌早朝、各メディアが報じる映像に映し出されたのは、現在でも世界最多となる520名の死者を出した航空機墜落事故の、目を疑いたくなる惨状でした。
ジャンボ機の機体が粉々に砕け散った恐るべき光景に衝撃を受けながらも、4名の生存者がいるという奇跡に胸が震えました。
作品の話に戻ると、物語はこの未曾有の大事故を追う地元新聞社の数日間の闘いをベースに、その全権デスクを任された主人公・悠木が、彼の背後にある二つの父子関係、そして過酷な山に挑むクライミングを絡めて、目の前に立ちはだかるそれぞれの壁にぶつかりながら乗り越えていく過程が描かれています。
原作は読んでないですが、そんな彼の複雑な心の葛藤と、過熱するスクープ合戦をクライマックスに向かってリンクさせていく展開には引き込まれます。
各場面に挿入される音楽の効果も優秀だと感じました。
そして堤真一、堺雅人、尾野真千子、遠藤憲一、でんでん、蛍雪次朗ら名だたる演技派が生み出すリアリティーは必見。
遠藤じゃなく滝藤賢一の半狂乱ぷり、山﨑努のセクハラ暴君ぶりなど彼らの十八番とも言える演技が好きな方にもオススメですが、私はどちらもやや食傷気味。
しかし何よりこの作品が持つ力の根源は、私にとっては最後の甲子園を戦うKKコンビに釘付けだったあの忘れ難い夏に起きた、事故の重大性と衝撃、そして多くの犠牲者それぞれの人生の重みなのです。
以上