私の映画コレクション二回目の今回は、猟奇作品が大好物なパイセンからのリクエストにお応えして(別に猟奇ものではないんですけどね)


「ゾディアック」

 Zodiac

(2007年/アメリカ)



※作品紹介はパッケージから引用

【作品紹介】

"謎が謎を呼び、恐怖がノンストップで迫り来る。この映画の求心力からは誰も逃れることができない…。"(ローリング・ストーンズ誌)

"開始から終了まで、圧倒的なパワーで疾駆する。「ゾディアック」から目が離せない。"

(ニューズウィーク誌)


「セブン」「ファイト・クラブ」の監督が放つ、実際に起こった未解決事件に基づくサスペンススリラー。

"ゾディアック"と名乗る連続殺人犯と、その事件の解決に挑む者たち。

「殺人」と「真実の究明」という全く逆の立場にいる人間たちが、謎が謎を呼ぶ事件を巡り、次第にその運命を狂わされていく…。


監督/デビット・フィンチャー

原作/ロバート・グレイスミス

出演/ジェイク・ギレンホール、ロバート・ダウニーJr、マーク・ラファロ、クロエ・セヴィニー他

157分




【レビュー】

「実際にあった未解決事件」という題材だけで、観たい度が高まる人も多いのではないでしょうか?

少なくとも私はそうです。


コーエン兄弟が監修したTVシリーズ「ファーゴ」はフィクションですが、毎回エピソードの冒頭に「これは実話に基づいています」というクレジットが流れて話題になりました。

確かにそう思って観た方がより面白かったのも事実です。



「事実は小説より奇なり」という言葉もありますが、私が思う実話の力が強い理由は、作為的なアラが少ないということかなと感じます。

そこでそんなこと言わんやろ!とか、あまりに出来すぎな展開は興醒めすることもありますから。



実話ものと言っても、事実をモチーフにしただけとか着想に用いるだけで、大胆にストーリーを組み立てるものも多いですが、この作品はどちらかというと事実を時系列に忠実に追っていきます。



題材となったゾディアック事件は、1969年から74年にサンフランシスコで発生した連続殺人事件で、犯人からマスコミや警察に犯行声明文や暗号が多数送られたことから、劇場型犯罪として有名です。



若いカップルを中心に無作為?に非道な手口で犯行を重ね、模倣犯も多く出現し社会的な混乱を生んだことでも知られています。


このへんの基本情報はWikipediaなどで何となくでも頭に入れてから観ることをオススメします。

なぜなら何年も膨大な情報と容疑者に振り回され、結局未解決のまま現在も捜査を続けている事件なので、何も知らないで観るとややこしくて頭がこんがらがる可能性があるからです。



作品自体は実際にこの事件捜査についてまとめた新聞社サンフランシスコ・クロニクルの風刺漫画家ロバート・グレイスミスの著書を元にしていて、ジェイク・ギレンホールがグレイスミス本人を演じています。



残酷な犯行シーンなどは少なく、警察と新聞社を舞台に事件を追う男たちの苦悩や執念を描いてるので、ドラマチックな展開や派手な捕物劇を期待し過ぎると裏切られるかも知れません。



しかしニクソン大統領のウォーターゲート事件を追う新聞記者の活躍を描いた「大統領の陰謀」や、ボストン・グローブ社が神父のスキャンダルとカトリック教会の裏の実態を暴いた「スポットライト」などもそうですが、思いがけず世間を揺るがす大事件を追うことになった人々を、リアリスティックに描いた作品は私の大好物なので、一回観て理解しきれなかった部分を含めて、何度も見直して楽しんでいる作品です。

こいつがゾディアック(真犯人)じゃないか?という人間に事情聴取する場面も、何度観てもドキドキします。




約2時間半の長尺ですが、一旦ハマれば時間を忘れて楽しめる作品です。

またこれを観るたびに感じるのは、日本映画でもこういう作品が観たいな〜という想いです。


私が少年期に世間を騒がせた、同じ劇場型犯罪である「グリコ森永事件」などは、格好の題材だと思います。

余談ですが、一橋文哉の著作「闇に消えた怪人ーグリコ森永事件の真相」は何度読み返しても面白いです。



この事件をモチーフにした塩田武士のミステリー小説「罪の声」が、今年小栗旬&星野源主演で映画化されるみたいですが、どちらかというと事実に忠実に時系列で追っていく作品が観たいです。



できればこういう作品によく起用されがちな上川隆也とか佐藤浩市とかは抜きで、監督はやっぱり原田眞人(クライマーズ・ハイ)かな〜。


ちょっと話は逸れましたが、実際に起きた未解決の連続殺人事件を描いた作品の中でも、「ゾディアック」は噛めば噛むほど味が出る系の良作だと思います。




あ、最後に言い忘れてましたが、デビット・フィンチャー監督は「セブン」や「ファイト・クラブ」など、90年代を代表するクセの強い傑作を撮ってますが、これは映像的にもそんなにクセが強くないです。

どちらかというと事件のあった時代感とリアリティーを強く意識して撮ってると思います。



ゆっくりと骨太でリアルなミステリーを観たい気分の時に是非どうぞ。


ちょっと長くなったな…。

次回からはもっと簡潔に。


以上