一年前の私は・・・まだまだ青二才の
坊やだった。
そして何より、心も身体もぼろぼろだった
私を、ママは何も言わず、何も聞かず
一生懸命に治そうとしてくれた。
傷の癒えた私はまた立ち上がり、そして
ママに一人の男として認めてもらえるよう、
修行の旅に出たのだ。
(一人前になって帰ってきたね)
一年ぶりに会って、ママは
そう思ってくれただろうか。
夢のような120分が瞬く間に過ぎ、
着替えて帰ろうとすると、ママが入ってきて
「有難う、またね」
そう言って、素早く私を抱き締め、
そして突き放した。
何が起きたのか理解できず、呆然としていた。
視線を合わせず、頬を染めているママの顔を
見て、漸く私は我に返り、
「あ・・・り、がとう」
と、下手な役者の台詞のように呟いて
店を後にした。
私は駅までの道を歩き始めたが、
やがて小走りになり、
最後はほとんど全力疾走になった。