U-26NPB選抜対大学日本代表戦、斎藤佑樹(早稲田大)の投球フォームを連続写真で振り返りたい。
夏の甲子園優勝の実績を引っさげ、東京六大学では80年ぶりとなる一年生開幕投手を務める。
史上初の一年生春のベストナイン獲得、春秋最多勝、全日本大学野球選手権大会優勝。
更には、日本代表への選出、早稲田大の春秋優勝など、順風満帆過ぎる大学野球をスタートした。
そんな斎藤ではあるが、ドラフトを来年に控え伸び悩みが囁かれ始めている。
高校三年生から大学一年生に掛けての活躍が規格外だった事もあるが、最近は内容も優れていない。
重心安定を意図として軸足である右膝を折り曲げる独特の投球フォームに問題の起点がある。
高校三年生時、春の選抜で横浜に3-13で大敗の後、腐心して辿り着いた投球フォームである。
投球フォームは「そこだけが課題」という事は考え難い。
一連動作である以上「そこだけ」ではなく「そこからが課題」という事になるのが通常である。
つまり課題がある場合、後半やフィニッシュに問題点が露呈されるという事になる。
結論を先に述べると斎藤の課題は①重心移動がスムースに行われない事に集約される。
また、それに関連する②股関節の使い方、③踏み込む足の着地方法の三点にある。
全ての原因は始動で右膝を深く折り曲げ、重心が著しく後方に落ちてしまう事と考えられる。
リリースの瞬間、ステップする左脚の膝が折れず真っ直ぐに伸び、重心は後方に置き去りになる。
それだけに上体の強さで押さえ込む事だけで140km/h台の球速を計測しているのは驚きに値する。
後方から前方へ重心移動が行われていれば、ステップする足の膝が強さに比例して直角に近くなる。
柔軟な股関節を利用して滞らず重心移動を行う東浜巨(亜細亜大)と比較で違いは一目瞭然だろう。
また、左膝の角度も去る事ながら、軸足とプレートとの接地にも注目して頂きたい。
東浜が踵までしっかり踏み込んでいるのに対して斎藤はつま先以外は反り返ってしまっている。
右脚の踵までプレートに接地させている東浜は上体の動きをロックして体の開きを抑えている。
軸脚の踵を地面に接地したままでは体は絶対に開かないので試して欲しい。
対して斎藤は体の開きの早さから、つま先がプレートに接地しているのみである。
フィニッシュでは左脚のつま先が浮いてしまうという稀な現象が見られる。
斎藤の悪癖であり高校時代も度々観られたが、最近は回数が増加傾向にあるように感じる。
これもまた重心が後方に残っている証拠であり、左脚の踵から着地している事に原因がある。
斎藤のように重心を沈めるとそこから前方に移動するのは難しいように感じる。
投球フォームとしては大きな課題であるが、改善する事自体はこだわりを捨てれば難しくない。
それでも、ストレートは140km/h台を計測。斎藤の上体の強さが並外れているのだろう。
また、ツーシームや持ち球を駆使した投球術で勝利を重ねてしまうのは驚異的ですらある。
投球フォームと同時に股関節の付け根部分の可動域の狭さも気になる要素ではある。
東浜のようなフォームは日々の積み重ねで修得出来るモノであり、一朝一夕には身に付かない。
マウンドに立ち続ける為、フォーム改造には大きな勇気と決断が要る事だと思う。
ただし、現状を打開して飛躍するには余り時間が残されてはいない。
軸足を膝を折り曲げるフォームと股関節の使い方を見直す必要があるように思う。