「県立岐阜商業」や「市立船橋」という呼称は一般にも知られている。
しかし、普通「県立」や「市立」を校名に付ける事は無い。例外的なのは東京の都立校である。
都雪谷・都小山台・都城東などなど都立の『都』を定冠詞として使用する。
そんな東京にあって、都立でもっとも上り調子にあるのが都立日野高校である。
夏の西東京大会では準決勝に進出。のちに甲子園出場する日大三に最大で4点をリードする展開だった。
そして、秋季大会も都立日野高校(以下、日野)は準決勝にコマを進めて来た。
準々決勝は野球漫画顔負けの劇的な逆転勝利で勝ち上がって来ている。
9回裏、二死・走者無しで2-6という圧倒的ビハインドからサヨナラ満塁ホームランで勝利。
(残念ながら神宮第二を後にしてからの出来事だったので見逃してしまった)
日野打線は良く振れている。「振れている」というのは、フルスイングをしているという意味だ。
大振りと紙一重であるが、フルスイングは自分の間合いで打席に立っている証拠と見る事が出来る。
そして、日野の各打者はネット裏へのファールが多かった。
ネット裏へのファールは、ボールを遠くに飛ばそうとしている動かぬ証拠である。
硬式ボールは、感覚的にも実際的にも、ボールの下半分を潰すように打ち込まないと飛ばない。
ライナーを打ちたければボールの中心部、ゴロを打ちたければ上方部を打ち抜くように振り抜く。
日野の各打者は内野手の間を抜くより、内野手の頭上を抜こうとしていたのではないだろうか。
右バッターは左中間、左バッターは右中間を狙っているような気さえした。
とにかく、打撃がしっかりと鍛えられている。
三回裏、四番・豊田は三球ネット裏にファールを飛ばしているが、レフト前に痛烈なヒット。
続く五番・菊池は一球ネット裏にファールを飛ばした後、センター前に運んでいる。
日野打線の場合、ネット裏に飛ぶ打球がカットや脆弱なスイングが原因ではない。
「強い打球をダイヤモンドに打ち込もう」という意図が垣間見えるフルスイングの副産物のように映った。
試合は中盤にチャンスをいかせなかった日野が終盤力尽きて8-9で東海大菅生に敗れた。
残念ながら日野はまたしてもベスト4の壁を突破出来なかった。
しかし、東京都から21世紀枠での選出とセンバツ出場の可能性が残されている。
首都圏の高校野球ファンなら、川崎北にスタイルが似ていると評せばイメージしやすいかもしれない。
日野のエース・松本は制球に安定感はあるが、追い込んでからのウイニングショットが欲しい。
投手陣の冬の成長次第で、日野が激戦の西東京の台風の目になるのではないだろうか。