ポーランドのワルシャワで開催されている、第19回ショパン国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
10月15日は、3次予選の第2日。
ちなみに、第19回ショパン国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
以下、曲はいずれもショパン作曲である。
第2日(10月15日)
35. Xiaoxuan LI (China, 2001-12-21)
Mazurka in G sharp minor Op. 33 No. 1
Mazurka in C major Op. 33 No. 2
Mazurka in D major Op. 33 No. 3
Mazurka in B minor Op. 33 No. 4
Sonata in B flat minor Op. 35
Scherzo in C sharp minor Op. 39
ピアノはスタインウェイ。
音楽的にも技術的にも水準以上で、妙なクセもないし、特に文句はない。
ただ、他のコンテスタントたちのような、圧倒的な技巧だとか迫力だとか、美音だとかロマン性だとか、これぞといった彼ならではの強みが何かあるかというと、難しいところか。
41. Tianyao LYU (China, 2008-10-21)
Mazurka in A minor Op. 59 No. 1
Mazurka in A flat major Op. 59 No. 2
Mazurka in F sharp minor Op. 59 No. 3
Prelude in D flat major Op. 28 No. 15
Sonata in B flat minor Op. 35
Berceuse in D flat major Op. 57
ピアノはファツィオリ。
若々しく情熱的な演奏。
若さゆえかやや無造作な箇所もあり、ソナタ第2番も先ほどのXiaoxuan LIの同曲演奏のようには整っていないけれど、そのぶん少し“アルゲリッチみ”があるというか、直感的な音楽の盛り上げ方が巧みで、聴後の充実感はこちらのほうがずっと上。
50. Vincent ONG (Malaysia, 2001-04-12)
Variations in B flat major on a theme from Mozart’s ‘Don Giovanni’ (‘Là ci darem la mano’) Op. 2
Mazurka in E minor Op. 41 No. 1
Mazurka in B major Op. 41 No. 2
Mazurka in A flat major Op. 41 No. 3
Mazurka in C sharp minor Op. 41 No. 4
Piano Sonata in B minor Op. 58
ピアノはカワイ。
史上最高の技巧の持ち主ともいうべきKevin CHENに対抗できるのは今回彼のみ、といったところか。
この東西の横綱を比較すると、晴れやかで洗練されたKevin CHENの音に対し、Vincent ONGは鄙びた“木”の音がする。
また、常に完璧なKevin CHENに対し、Vincent ONGは多少のムラ気がある。
しかし、Vincent ONGが時折聴かせる“情念”は、常に品のいいKevin CHENからは決して聴かれないもので、走句の瞬発力や低音の強打の凄みは彼ならでは。
52. Piotr PAWLAK (Poland, 1998-02-20)
Rondo à la Krakowiak in F major Op. 14
Mazurka in B flat major Op. 17 No. 1
Mazurka in E minor Op. 17 No. 2
Mazurka in A flat major Op. 17 No. 3
Mazurka in A minor Op. 17 No. 4
Piano Sonata in B minor Op. 58
ピアノはカワイ。
おそらく、3次予選のコンテスタント中、技巧面で最も弱いか。
トップクラスのVincent ONGのすぐ後だけに、余計目立つ。
とはいえ、古き佳きポーランドを思わせる明るい音色が魅力で、ロンド・クラコヴィアクなど大変味わい深い。
前回大会(その記事はこちらなど)の第3位受賞者マルティン・ガルシア・ガルシアのような明るい個性派枠(?)でファイナルに進むこともあり得るかも。
53. Yehuda PROKOPOWICZ (Poland, 2005-11-16)
Mazurka in G sharp minor Op. 33 No. 1
Mazurka in C major Op. 33 No. 2
Mazurka in D major Op. 33 No. 3
Mazurka in B minor Op. 33 No. 4
Scherzo in E major Op. 54
Berceuse in D flat major Op. 57
Sonata in B flat minor Op. 35
ピアノはスタインウェイ。
一つ前のPiotr PAWLAKほどの明るい音色はないけれど、そのぶん技術的にはやや上であり、ミスはちょこちょこあるがそれなりにまとまっている。
いかにも古き佳きポーランドというわけではないが、マズルカではポーランドの味が出せており、バランスがいいとも言えるかも(Piotr PAWLAKくらい振り切った方がいいとも言えるが)。
58. Miyu SHINDO (Japan, 2002-04-26)
Mazurka in B major Op. 56 No. 1
Mazurka in C major Op. 56 No. 2
Mazurka in C minor Op. 56 No. 3
Sonata in B flat minor Op. 35
Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22
ピアノはスタインウェイ。
詩的というべきか、大声で叫ぶことをしない静的な演奏。
ソナタ第2番など、クライマックスらしいクライマックスのない解釈だが、それだけにかえって曲の陰鬱さが際立つ。
アンダンテ・スピアナートも、夢見るようなというよりは、何だか少しもの悲しい。
“わびさび”という形容が正しいかどうか、ぱっと聴いただけでは分からない、そこはかとない音楽表現、こういうものが審査員にしっかり評価されることを切に願う。
そんなわけで、第2日の演奏者のうち、私がファイナルに進んでほしいと思うのは
41. Tianyao LYU (China, 2008-10-21)
50. Vincent ONG (Malaysia, 2001-04-12)
58. Miyu SHINDO (Japan, 2002-04-26)
あたりである。
そして、まだ第3日は行われていないが、それを想像で補完しつつ、私がファイナルに進んでほしい10人を選ぶとすると
第1日
24. David KHRIKULI (Georgia, 2001-04-26)
28. Shiori KUWAHARA (Japan, 1995-10-11)
34. Tianyou LI (China, 2004-04-05)
第2日
41. Tianyao LYU (China, 2008-10-21)
50. Vincent ONG (Malaysia, 2001-04-12)
58. Miyu SHINDO (Japan, 2002-04-26)
第3日
64. Tomoharu USHIDA (Japan, 1999-10-16)
66. Zitong WANG (China, 1999-02-03)
06. Kevin CHEN (Canada, 2005-03-07)
39. Eric LU (USA, 1997-12-15)
あたりになる。
桑原志織に進藤実優に牛田智大、3人ともぜひ通過してほしいところだが、実際にはそううまくは行かないかもしれない。
祈るばかりである。
次回(10月16日)は3次予選の第3日。
3次予選の最終日である。
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