「L.V.ベートーヴェン」
※ライブストリーミング配信
【日時】
2022年12月12日(月) 開演 20:00
【会場】
カフェ・モンタージュ (京都)
【演奏】
ヴァイオリン:上里はな子
ピアノ:松本和将
【プログラム】
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 op.24 "春"
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 op.47 "クロイツェル"
カフェ・モンタージュ主催の上里はな子&松本和将によるベートーヴェン2大ヴァイオリン・ソナタの演奏会をオンライン配信で聴いた。
前半のプログラムは、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」。
この曲で私の好きな録音は
●クライスラー(Vn) ルップ(Pf) 1936年2月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●シュナイダーハン(Vn) W.ケンプ(Pf) 1952年9月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●グリュミオー(Vn) ハスキル(Pf) 1957年1月セッション盤(Apple Music/YouTube1/2/3/4)
●パールマン(Vn) アシュケナージ(Pf) 1974年6月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●P.フランク(Vn) C.フランク(Pf) 1992-95年セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●安永徹(Vn) 市野あゆみ(Pf) 1995年セッション盤(Apple Music/CD)
●鈴木愛理(Vn) クズネツォフ(Pf) 2017年10月31日、11月1日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
この曲はとにかくのびのびと芳醇に、それでいてくどくなく上品に歌わせてほしい。
今回の上里はな子らの演奏は、これらの盤に比べると質実剛健というか、甘さ控えめのストイックな歌わせ方で、「春」というよりは「秋」といった印象。
といっても味気ないわけでは決してなく、本場ドイツを思わせる端正で味わい深い、彼女たちの個性のよく出た演奏だった。
後半のプログラムは、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」。
この曲で私の好きな録音は
●イブラギモヴァ(Vn) ティベルギアン(Pf) 2010年5月25日ロンドンライヴ盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3)
あたりである。
他にティボー/コルトー盤(1929)、フーベルマン/フリードマン盤(1930)、クーレンカンプ/ケンプ盤(1935)、ゴールドベルク/クラウス盤(1936)、ブッシュ/ゼルキン盤(1941)、タシュナー/ギーゼキング盤(1951)、ハイフェッツ/スミス盤(1960)、ファウスト/メルニコフ盤(2006)、クロサキ/ニコルソン盤(2008)、ガット/リベール盤(2015)、五嶋みどり/ティボーデ盤(2022)あたりも好きで、名盤が目白押しの曲だが、このイブラギモヴァ盤のまっすぐな悲劇性、ケレン味のないデモーニッシュ性は、数多ある名盤たちを凌駕するほどのものだと思う。
実演で聴いたときも、ものすごかった(その記事はこちら)。
今回の上里はな子らの演奏は、これらの火花散るような名盤たちとは違った、クラシカルで落ち着いた構えの、大人の音楽だった。
激しい解釈を好む私にはややもの足りなくも感じられたが、新鮮でもあった。
飛ぶ鳥を落とす勢いの32歳のベートーヴェンのいかにもな悲壮感においそれとスポットを当てることは、慎重な彼女たちにしてみれば避けるべきことだったのかもしれない。
そういえば、ベートーヴェンがこの第9番から9年経った41歳時に作曲した第10番、彼の最後のヴァイオリン・ソナタだが、それを上里はな子らが先日演奏した際には、彼女たちの大人な味わいが曲にぴったり合った、堂々たる風格をもつ最高の名演となっていたのだった(その記事はこちら)。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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