今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
好きなカルテット、キアロスクーロ四重奏団の新譜について先日書いたが(その記事はこちら)、それ以外にも注目しているカルテットがいくつかある。
そのうちの一つ、モディリアーニ四重奏団の新譜が発売された(NML/Apple Music/CD)。
曲目は、シューベルトの弦楽四重奏曲全集である。
詳細は以下の通り。
モディリアーニ四重奏団
シューベルトの弦楽四重奏曲全集登場。縦と横の美しい完璧なバランス
シューベルトの弦楽四重奏曲は、どれもが美しい旋律と抒情に満ちた音楽史上の至宝。2003年に結成されたモディリアーニ四重奏団が2021年の2月から10月まで、ほぼ1年間をかけてじっくり全曲録音に取り組みました。一挙にボックス・セットとしてリリースします。
全体をとおして素晴らしいバランスのアンサンブル。ひとつのパートが旋律を奏でている時も他のパートも実に気持ちよいバランスで響いており、ハーモニーを奏でているひとつひとつの瞬間のどこを切り取っても端正で美しいバランス。それぞれの出るところと引くところの駆け引きも見事。縦と横の線の完ぺきなバランス、そして心地よい抑制感、つねに豊かに漂う抒情と、実に美しいシューベルトの登場です。(輸入元情報)
【収録情報】
シューベルト:弦楽四重奏曲全集
Disc1~ハーモニー
● 弦楽四重奏曲第1番ハ短調(変ロ長調) D.18
● 弦楽四重奏曲第4番ハ長調 D.46
● 弦楽四重奏曲第13番イ短調 D.804『ロザムンデ』
Disc2~歌の技法
● 弦楽四重奏曲第2番ハ長調 D.32
● 弦楽四重奏曲第6番ニ長調 D.74
● 弦楽四重奏曲第10番変ホ長調 D.87
Disc3~古典派の精神
● 弦楽四重奏曲第3番変ロ長調 D.36
● 弦楽四重奏曲第8番変ロ長調 D.112
● 弦楽四重奏曲第11番ホ長調 D.353
Disc4~魂の感傷
● 弦楽四重奏曲第5番変ロ長調 D.68
● 弦楽四重奏曲第9番ト短調 D.173
● 弦楽四重奏曲第14番ニ短調 D.810『死と乙女』
Disc5~光と影
● 弦楽四重奏曲第12番ハ短調 D.703『四重奏断章』
● 弦楽四重奏曲第7番ニ長調 D.94
● 弦楽四重奏曲第15番ト長調 D.887
モディリアーニ四重奏団
アムリ・コエイトー(ヴァイオリン/1773年製グァダニーニ)
ロイック・リョー(ヴァイオリン/1780年製グァダニーニ)
ローラン・マルフェング(ヴィオラ/1660年製マリアーニ)
フランソワ・キエフェル(チェロ/1706年製マッテオ・ゴフリラー「ex-Warburg」)
録音時期:2021年2月、3月(第1,2,3,5,6,11番)、9月(第12,13,14,15番)、10月(第4,8,9,10番)
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。
2003年にパリで結成、ハイドンやシューマンなどで良い録音をしてきたモディリアーニ四重奏団が、今回シューベルト全集という一大プロジェクトにチャレンジした。
シューベルトの弦楽四重奏曲全曲録音というと、私はこれまでアウリン四重奏団のものが好きだったのだが、今回のモディリアーニ四重奏団はそれに匹敵すると思う(繊細さではむしろ優っているかも)。
普段目立たない初期作品が、美しく聴こえる。
後期の3曲については、第13番「ロザムンデ」と第14番「死と乙女」はキアロスクーロ四重奏団の圧倒的名盤が存在するので分が悪いが(その記事はこちら)、第15番はキアロスクーロ四重奏団はまだ録音していない。
シューベルト最後にして最高の弦楽四重奏曲である第15番、現時点で私の好きな録音は
●コーリッシュ四重奏団 1934年セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●ハーゲン四重奏団 1997年6月、1998年2月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●テツラフ四重奏団 2015年9月19-21日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●アルテア四重奏団 2016年5月31日、6月2日セッション盤(Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
あたりである。
とにかくこの曲では“清潔感”が何より大事。
今回のモディリアーニ四重奏団は、これらに並ぶ演奏となっているように思う。
フランスの団体らしい明るさが特徴で、シューベルトの孤独がないといえばそうかもしれないが、最後の弦楽四重奏曲が明るく優美なのも悪くない。
それに、大事な“清潔感”はちゃんとあって、響きの純度を保つことができている。
いつかキアロスクーロ四重奏団がこの曲を録音するとき、第13、14番のようにこれらの名盤をはるかに超えてくるのか、それともこれほどの名盤たちを超えるのはさすがに無理なのか、私には想像もつかない。
なお、モディリアーニ四重奏団のこれまでのCDについての記事はこちら。
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