島田彩乃 上里はな子 ビルマン聡平 坂口弦太郎 江口心一 京都公演 シューマン ピアノ五重奏曲他 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

「R.シューマン」 室内楽全集 VOL.3

- ピアノ五重奏と珠玉の小曲集 -

※ライブストリーミング配信

 

【日時】

2022年3月3日(木) 開演 20:00

2022年3月4日(金) 開演 20:00

 

【会場】

カフェ・モンタージュ (京都)

 

【演奏】

ピアノ:島田彩乃

ヴァイオリン:上里はな子

ヴァイオリン:ビルマン聡平

ヴィオラ:坂口弦太郎

チェロ:江口心一

 

【プログラム】

シューマン:「幻想小曲集」op.88

   - 上里はな子vn, 江口心一vc, 島田彩乃pf

シューマン:「おとぎ話」op.132

   - ビルマン聡平vn, 坂口弦太郎va, 島田彩乃pf

シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op.44

   - 上里はな子 1stvn, ビルマン聡平 2ndvn,

     坂口弦太郎 va, 江口心一 vc, 島田彩乃 pf

 

 

 

 

 

下記リブログ元の記事に書いた前回公演に引き続き、カフェ・モンタージュ主催のシューマン室内楽全曲演奏会シリーズをオンライン配信で聴いた。

今回は同シリーズの第3回である。

 

 

 

 

 

最初のプログラムは、シューマンの幻想小曲集op.88。

この曲で私の好きな録音は

 

●ハイペリオン・トリオ 2004年10月~2005年2月セッション盤(NMLApple MusicCD

●アンスネス(Pf) C.テツラフ(Vn) T.テツラフ(Vc) 2009年9月、2010年5月セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube1234

●ホルショフスキ・トリオ 2017年12月6-9日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube1234

 

あたりである。

 

 

ゲンダイオンガク風の淡々としたハイペリオン・トリオ、まったりと味わい深いテツラフら、今風の洗練されたホルショフスキ・トリオと三者三様だが、いずれも優れて繊細な表現が聴かれる。

今回の上里はな子らは、これらの盤ほどの繊細さは聴かれなかったにしても、味気なさや素っ気なさとは無縁の、温かみのある素晴らしい演奏だった。

 

 

 

 

 

次のプログラムは、シューマンの「おとぎ話」op.132。

この曲で私の好きな録音は

 

●S.マイヤー(Cl) T.ツィンマーマン(Va) H.ヘル(Pf) 1987年セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube1234

●P.メイエ(Cl) タメスティ(Va) ル・サージュ(Pf) 2006年セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube1234

 

あたりである。

このクラリネットの二大名手の表現力は群を抜いている。

 

 

今回はクラリネットの代わりにヴァイオリン、という編成である。

ヴァイオリンのビルマン聡平の演奏はおそらく初めて聴いたが、音程やフレージングに安定感があり、なかなかの実力者の印象。

分厚い音というほどではないにしても、線が細いというよりは幾分たっぷりした音を持ち、かつ演奏様式は端正、上里はな子の音楽との親和性が高そうで、次の五重奏へ向け期待が高まった。

 

 

 

 

 

最後のプログラムは、シューマンのピアノ五重奏曲。

この曲で私の好きな録音は

 

●R.ゼルキン(Pf) ブッシュ四重奏団 1942年5月22日セッション盤(Apple MusicCDYouTube

●ツァハリアス(Pf) ケルビーニ四重奏団 1991年9月16,17日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube1234

●マイボローダ(Pf) フーゴ・ヴォルフ四重奏団 2013年9月クララハスキルコンクールライヴ(動画

●桑原志織(Pf) ダヴィッド・オイストラフ四重奏団 2019年9月3日ブゾーニコンクールライヴ(動画

●小林愛実(Pf) 北川千紗(Vn) 前田妃奈(Vn) 田原綾子(Va) 水野優也(Vc) 2020年12月19日東京ライヴ(動画

 

あたりである。

タイプはまちまちだが、いずれも際立って個性的な名演。

 

 

しかし、今回の上里はな子らの演奏も、これらにまったく引けを取らない、堂々たるものだった。

どっしりした構えの雄大な演奏で、まるで交響曲のよう。

往年の名盤として名高い上記のゼルキン&ブッシュ四重奏団でさえ、ここまでの雄大さはない(むしろノイエ・ザッハリヒカイト全盛期のためサクサクしている)。

 

 

この曲のこういうタイプの名演は、ありそうでなかったように思う。

第1楽章の冒頭からして、風格と躍動感とが見事に同居している。

また同楽章の第2主題、江口心一のチェロの重みと落ち着き。

ブッシュ四重奏団のチェロ奏者ヘルマン・ブッシュも、小林愛実らと弾いた水野優也も、ともに私の好きなチェリストなのだが、今回の江口心一の存在感は彼らをも凌駕してしまうほどである。

 

 

終楽章コーダのフガートの充実ぶりも感動的。

一人の強い個性が他を牽引するといった演奏(上記のマイボローダなどその好例)ではなく、似通った音楽性を持つ5人が同じ方向を目指して音楽を作り上げるからこその、この充実なのだろう。

その意味ではゼルキン&ブッシュ四重奏団盤が似ているが、上述の通り彼らはサクサクしているため、ブルックナーの交響曲のように雄大なフガートが聴きたければ上里はな子らの演奏でなければならない。

 

 

 

 

 

なお、3月4日にも同じプログラムで公演が行われる。

20時開演予定。 → チケットはこちら

また有料配信もあり(3月5日23時59分まで)。 → 配信はこちら

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 

 

 


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