(フルトヴェングラーの「バイロイトの第九」スウェーデン放送所蔵音源が初発売) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

往年の大指揮者、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの有名な「バイロイトの第九」のカットなしの全貌を唯一収めているとされる、スウェーデン放送所蔵音源が初発売された(Apple MusicCD)。

詳細は以下の通り。

 

 

 

 

 

 

 

フルトヴェングラー生誕135年の掉尾を飾る世紀の大発見!
「全人類の至宝」とまで讃えられてきた、フルトヴェングラー至高の名演ライヴ『バイロイトの第九』、
その真実がついに明らかにされる!


まさに1951年7月29日、スウェーデン放送によって中継放送された番組、冒頭の4か国語(ドイツ語、フランス語、英語、スウェーデン語の順)によるアナウンスから巨匠の入場、渾身の指揮、やや長めのインターバルをはさみ、最後の2分半以上に及ぶ大歓声と嵐のような拍手(と番組終了のアナウンス)まで、85分間、一切のカットなしに当夜のすべての音をSACDハイブリッド盤に収録しました。
冒頭アナウンスは「1951年バイロイト音楽祭。バイエルン放送がリヒャルト・ワーグナー音楽祭(バイロイト音楽祭)のオープニング・コンサートをバイロイト祝祭劇場からドイツ・オーストリア放送、英国放送、フランス放送、ストックホルム放送を通じてお届けします。曲はヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮によるベートーヴェンの交響曲第9番です。」というもので、これがまさに生中継だったことがうかがえます。
発掘のきっかけはキングインターナショナルと縁の深かった仏ターラ・レーベルの主宰者、故ルネ・トレミヌ氏が遺していった『Furtwangler / A Discography by Rene Tremine』(ターラ・プロダクション 1997年刊)A4版56ページの冊子。この中の「バイロイトの第九」(1951年7月29日 バイロイト、祝祭歌劇場管弦楽団)の項の最後の行に次のような記述が「Bavarian Radio, Munich and Swedish Radio (archive LB 14784)」。バイエルン放送、ミュンヘン放送、そしてスウェーデン放送も放送していたというのです!
この1行の記述を頼りに、弊社では長年の付き合いがあるスウェーデンBISのロベルト・フォン・バール会長に音源探しを依頼。そしてついに、見つかったのです! あのトレミヌ氏でさえも入手できずに、70年もの間スウェーデン放送局に眠っていた「バイロイトの第九」放送音源が。

【バール氏からのメール】
「音の状態は悪くない。思ったより良好。SACDハイブリッドで出すことに決めた。マスターテープを借りられた。これから音質とノイズ等のチェックをおこない、年内緊急発売を目指してスタジオ作業中だ。マスターテープに遺された音は一切カットせずに、85分間を1枚のCDにも収録する予定である。この伝説の名演の核心に触れられることに我々スタッフ一同も興奮している。」

バール氏も情熱を燃やして作業中のSACDハイブリッド盤「スウェーデン放送所蔵音源によるバイロイトの第9」に乞うご期待!

★トラック6、13分08秒付近に音量が一時的に落ちる箇所がございますが、これはスウェーデン放送所蔵のマスターテープに起因するものです。中継放送をスウェーデン放送がテープに同時収録している際に起こったと思われ、「BIS」はその音を修正せずそのまま使っています。(輸入元情報)

【収録情報】
● ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 Op.125『合唱』


エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
エリーザベト・ヘンゲン(アルト)
ハンス・ホップ(テノール)
オットー・エーデルマン(バス)
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)

録音時期:1951年7月29日
録音場所:バイロイト祝祭劇場
録音方式:モノラル(ライヴ)

SACD Hybrid
スウェーデン放送所蔵音源

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

「バイロイトの第九」には、リハーサル+ライヴの編集盤と思しきEMI盤と、ライヴそのままと思しきORFEO盤の2種の音源がある。

今回のBIS盤は、ORFEO盤と同一音源とのこと。

ただし、ORFEO盤は楽章間インターバルや終演後の拍手が省かれているが、BIS盤にはそれらが全て入っている。

最後の音から拍手までにはかなりの長さの“間”があり、フルトヴェングラーがぴたりと動かずに間を取っていたのかな、などと想像するのは楽しい(この“間”が本当に無編集ならば、の話だが)。

ただし、このBIS盤は音量レベルが小さく、鑑賞用としてはORFEO盤のほうが適している印象である。

 

 

ところで、リハーサル+ライヴの編集盤と思しきEMI盤も、演奏の解釈としてはORFEO盤・BIS盤とほとんど変わらない。

また、EMI盤はレコーディング会社がきれいに録音しただけあって、ラジオ放送音源であるORFEO盤・BIS盤よりも音質はずいぶん良い。

なので、無編集ライヴということにこだわらない人には、基本的にはEMI盤で十分だと思う。

 

 

なお、EMI音源にも色々あるが、そのうち55枚CDボックスとして出た最近のワーナーのリマスター盤(その記事はこちら)には、従来のEMI盤と違って楽章間インターバルがしっかり収録されている。

第1~2楽章間インターバルをワーナー盤と今回のBIS盤とで聴き比べてみると、BIS盤には妙なヴァイオリンの音が入ってしまっているのが聴こえる(これはワーナー盤にはない)。

スウェーデン放送がテープ音源をダビングしたときに、よその音が入り込んでしまったのだろうか。

なので、楽章間インターバルを楽しみたい人(そんな人いるのか知らないが)には、ワーナー盤がオススメである。

ただしワーナー盤では、終演後の拍手については従来のEMI盤と同様の編集がみられるため、終演後の拍手も無編集で楽しみたい場合にはBIS盤を聴かねばならない。

また、ワーナー盤は全体的に音質が乾いていて潤いがないため、楽章間インターバルや終演後の拍手など気にせず普通に音楽を楽しみたい人には、従来のEMI盤が最適である(私も従来EMI盤が一番好き)。

 

 

まとめると、BIS盤はバイエルン放送が収録したライヴそのままの音源で、おそらく最初から最後まで無編集であり、この日のライヴの雰囲気がノーカットで楽しめるが、音質や音量レベルはいまいちで、また楽章間インターバルに妙なヴァイオリンの音が入り込んでしまっており、鑑賞用というよりは資料用といった印象である。

 

 

なお、今回のBIS盤について詳しく知りたい方は、こちらのサイトも参照されたい(緑色の字の部分)。

 

 


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