(ルガンスキーの幻のデビュー盤をついに入手) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

先日、ソン・ユルのメフィスト・ワルツについての記事を書いて(その記事はこちら)、思い出したこと。

好きなピアニスト、ニコライ・ルガンスキーが19歳のときに録音したCD(おそらくデビュー盤)は、名盤の誉れ高く、特にリストのメフィスト・ワルツが絶品と専らの評判なのだが、残念ながら廃盤となっている(アマゾンのページはこちら)。

15年ほどずっと探し続けてきたのだが、最近ついに中古盤を入手することができた。

 

 

収録曲は以下の通り。

 

J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971

ショパン:幻想曲 ヘ短調 op.49

スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第2番 嬰ト短調 op.19 「幻想ソナタ」

リスト:ペトラルカのソネット 第123番

リスト:鬼火

リスト:メフィスト・ワルツ 第1番

 

レーベルは、ビクター音楽産業株式会社(型番はVICC-108)。

1991年6月5,7日、埼玉県北葛飾郡松伏町の田園ホール・エローラでの録音である。

バッハだけはYouTubeにアップされていたのですでに聴いていたが、それ以外の曲は今回初めて聴くことができた。

 

 

 

 

 

長年探した、ルガンスキーのメフィスト・ワルツ第1番。

聴いてみると、確かにうまい。

彼と並び称されるヴィルトゥオーゾ、マツーエフにも見事な同曲盤があるが、爆演系のマツーエフに対し、ルガンスキーはあくまで端正な音楽づくりで、その点も私としては好み。

3年前の私なら、きっと決定盤に推していたことだろう。

 

 

ただ、今の私は

 

●ソン・ユル(Pf) 2018年11月11日浜コンライヴ盤(CD)

 

という、ルガンスキーの端正さとマツーエフの勢いとを併せてさらに洗練を加えたような、究極の名盤を知ってしまっている。

ソン・ユル盤に比べると、例えば冒頭、連打の和音を重ねていく際の推進力というか、盛り上げ方がやや物足りない。

 

 

また曲の後半、跳躍部分はさすがの出来だが、そこから幅広いアルペッジョ部分へとなだれ込んでいくクライマックスの作り方がいまいちで、勢いが落ちてしまう。

幅広いアルペッジョ部分に入った後はしっかり盛り上げているが、ただしこのアルペッジョも、ソン・ユルの精緻な演奏に比べると細部を弾き飛ばしているように聴こえる。

 

 

と、つい文句を書いてしまったが、他の多くの盤に比べればよほどうまく、完成度は相当に高い。

ソン・ユルに次ぐ第二の盤として、今後も聴き続けていきたい。

それにしても、これを弾いたルガンスキーは19歳、ソン・ユルは17~18歳。

メフィスト・ワルツを最もうまく弾けるのは、実は10歳代ということか。

 

 

 

 

 

他に、リストの「鬼火」も出色の出来。

この曲で私の好きな録音は

 

●アシュケナージ(Pf) 1970年5月29-31日、6月3日、12月18,20,21日セッション盤(Apple MusicCDYouTube

●横山幸雄(Pf) 1998年3月23-25日セッション盤(Apple MusicCD

●古海行子(Pf) 2018年11月7-8日セッション盤(Apple MusicCDYouTube

 

あたりである。

古典的名盤のアシュケナージ、とにかく速い横山幸雄、落ち着いて丁寧な古海行子、と三者三様だが、抜群の安定感という点では共通している。

 

 

ルガンスキーは、上記3盤よりも(そして彼自身の新盤よりも)ペダルが薄めの印象で、くっきりした明瞭度の高い音づくりが好ましい。

ただ、その分わずかによろける箇所があるのと、またテンポの揺らし方がやや安定感に欠けるきらいがある。

それでも、やはり他の多くの盤に比べればよほどうまく、上記3盤に並ぶとまでは言わなくとも、それに次ぐキーシン盤、ゲルシュタイン盤、ググニン盤、阪田知樹(エリザベートコンクールライヴ)あたりと同程度には好きな演奏となった。

 

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


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