山本貴志 京都公演 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第21番「ヴァルトシュタイン」 ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

「ワルトシュタイン」

 

【日時】

2021年6月21日(月) 開演 20:00 (開場 19:30)

 

【会場】

カフェ・モンタージュ (京都)

 

【演奏】

ピアノ:山本貴志

 

【プログラム】

シューベルト:即興曲 ハ短調 D899-1

ショパン:4つのマズルカ op.24

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 op.53

 

 

 

 

 

好きなピアニスト、山本貴志のコンサートを聴きに行った。

以前は半年に一回程度のペースで、京都のバロックザールでショパン全曲ツィクルスを開催してくれていたのだが、コロナ禍に入ってからは中止され、以後彼の演奏を聴く機会を持てないでいた。

そんな彼が、今回同じ京都のカフェ・モンタージュで、初のソロ公演を開くこととなった。

私にとっては、前回のバロックザール公演(その記事はこちら)から約2年ぶりの彼の実演である。

 

 

 

 

 

最初のプログラムは、シューベルトの即興曲D899-1。

この曲で私の好きな録音は

 

●シフ(Pf) 1978年6月15,16日セッション盤(CD

●ピリス(Pf) 1987年セッション盤(CD

●シフ(Pf) 1989年3月ミュンヘンライヴ盤(DVD

●シフ(Pf) 1990年1月セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

●江尻南美(Pf) 2014年1月10-12日セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube

 

あたりである。

 

 

今回の山本貴志の演奏は、これらの静謐なシューベルトとは全く異なるアプローチ。

まるでショパンの同じハ短調のノクターンop.48-1のような、きわめてロマン的かつ情熱的な世界が繰り広げられた(主要主題が三連符の激烈な伴奏をともなって再現する箇所など特に類似している)。

この曲のイメージとは違ったが、凄まじい迫力に圧倒された。

 

 

 

 

 

次のプログラムは、ショパンの「4つのマズルカ」op.24。

この曲で私の好きな録音は

 

●フランソワ(Pf) 1956年2,3月セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube1234

●フアンチ(Pf) 2010年10月10日ショパンコンクールライヴ(動画1234

●キム・スヨン(Pf) 2015年10月14日ショパンコンクールライヴ(動画1234

 

あたりである。

 

 

今回の山本貴志の演奏は、先ほどのシューベルト同様、大変に情熱的なもの。

シューベルトにはやや異質だった彼の音楽性もショパンには全くふさわしく、まさに独壇場。

第4曲など、単身パリに出たショパンの望郷の念を表すかのような、強い情念にあふれた演奏で、上の各名盤にも増して「ポーランド」を感じさせてくれる。

この曲らしい最高の名演と言っていいのではないか。

 

 

 

 

 

最後のプログラムは、ベートーヴェンの「ヴァルトシュタイン」ソナタ。

この曲で私の好きな録音は

 

●F.グルダ(Pf) 1958年9月セッション盤(NMLApple MusicCDYouTube123

●佐藤卓史(Pf) 2013年7月10-12日セッション盤(CD

 

あたりである(奇しくも共にウィーンでの録音)。

 

 

今回の山本貴志の演奏はやはり情熱的な勢いを持ち、テンポの変化もめまぐるしい。

同い年の佐藤卓史も基本テンポは似ているが、変化せず常に一貫しており、対照的である。

ベートーヴェンらしい、ソナタらしいのは佐藤卓史のほうだが、山本貴志の幻想曲風の解釈もこれはこれで面白い。

第2楽章など彼が弾くと誰よりも幻想的だし、終楽章の2つのエピソード部のパワーも圧巻。

終楽章コーダでは多少の疵も厭わずに限界までテンポを速め、全力を出し切って曲を閉じる(なおオクターヴグリッサンドは両手のユニゾンで弾いていた)。

 

 

 

 

 

今回の演奏会では、会場が小さめであり奏者が眼前であったこともあってか、山本貴志の音の迫力がすごかった。

ただ、それは会場のためだけではなく、彼がショパンコンクールの頃よりもさらに円熟し、いっそう情熱的な音楽をするようになったためでもあるかもしれない。

ふと、20歳頃からすでに完璧なテクニックを身につけたポリーニが、30歳代になってさらにダイナミズムを手にし、並ぶ者のないピアニストとなったことが思い出された。

 

 

ともあれ、山本貴志。

彼にはぜひ、松本和将や佐藤卓史のようにカフェ・モンタージュの常連になっていただきたいものである。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


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