(ボストリッジの新譜 ベートーヴェン 遥かなる恋人に寄す) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

好きなテノール歌手、イアン・ボストリッジの新譜が発売された。

ベートーヴェンの歌曲集である(NMLApple MusicCD)。

詳細は以下の通り。

 

 

 

 

 

 

ベートーヴェン生誕250年記念録音!
現代最高のテノール、ボストリッジが歌うロマンティックな歌曲集
パッパーノのピアノでの表現も絶品!


このアルバムの中心となるのは、1816年に作曲された連作歌曲集『遥かなる恋人に寄す』。この時期のベートーヴェンは第7交響曲を出版したばかりで、少しスランプに陥っていたとされますが、この歌曲集は第1曲の主題が最後の第6曲で回帰するなどの工夫が凝らされているだけではなく、パッパーノは「ベートーヴェンがこれまでになく集中して書いた13分から14分の音楽」と評し、ボストリッジも「遠く離れた最愛の恋人」というテーマはベートーヴェンの秘められた情熱を感じさせると高く評価し、限りない共感を込めて優しく歌い上げています。
この歌曲集と同じく、良く知られる『アデライーデ』は1790年代の作品。歌の主人公はこの世を去った男で、遺してきた恋人に語り掛けるという内容ですが、ゆったりとした導入部と活発な後半部の対比が美しく、発表当時から大変な人気を誇った曲です。このような曲を歌わせるとボストリッジの右に出る者はいないでしょう。切々と語り、時には哀願しながら感情の高まりを歌い上げるボストリッジの妙技をお楽しみください。
こちらも良く知られる『ノミの歌』や爽やかな風が吹き抜けるような『5月の歌』などベートーヴェンのチャーミングな一面を楽しむとともに、あまり耳にすることのない一連の民謡編曲集では名手ヴィルデ・フラングとニコラ・アルトシュテットがアンサンブルに加わり、パッパーノとともに奏でる上質なピアノ三重奏を伴奏にしたボストリッジが「気の置けない楽しい歌」を披露。そして最後に置かれた『モルモット』。小動物を連れて「あっちへ、こっちへ」さまざまな国を旅する大道芸人の歌でアルバムを締めくくるというのもボストリッジらしいひねりの効いた選曲です。(輸入元情報)
 


【収録情報】
ベートーヴェン:
1. 連作歌曲『遥かなる恋人に寄す』 Op.98
2. 歌曲『アデライーデ』 Op.46
3. 歌曲『あこがれ』(ただ憧れを知る人だけが) WoO.134
4. 歌曲集『6つの歌』 Op.75より「ゲーテのファウストより」(ノミの歌)
5. 歌曲『優しき愛』 WoO.123
6. アリエッタ『この暗い墓の中に』 WoO.133
7. 歌曲集『8つの歌』 Op.52より「5月の歌」
8. 歌曲『ぼくは君を想う』(思い出) WoO.136
9. 歌曲『あきらめ』 WoO.149
10. 『12のアイルランドの歌』 WoO.154より「アイルランド男の胸は高鳴る」
11. 『12のアイルランドの歌』 WoO.154より「いとしいダーモットよ、だれが」
12. 『7つのイギリスの歌』 WoO.158bより「おおメアリーは、絹をまとい」
13. 『26のウェールズの歌』 WoO.155より「別れのキス」
14. 『25のスコットランドの歌』 Op.108より「インヴァネスの愛らしい乙女」
15. 『25のアイルランドの歌』 WoO.152より「アルスターへの帰還」
16. 『25のアイルランドの歌』 WoO.152より「みんな楽しく輪になって」
17. 『25のスコットランドの歌』 Op.108より「夕暮れに」
18. 歌曲集『8つの歌』 Op.52より「モルモット」


イアン・ボストリッジ(テノール)
アントニオ・パッパーノ(ピアノ)
ヴィルデ・フラング(ヴァイオリン:10-17)
ニコラ・アルトシュテット(チェロ:10-17)

録音時期:2019年10月2-4日
録音場所:ロンドン、ハムステッド、セント・ジュード・オン・ザ・ヒル教会
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

ベートーヴェン・イヤーを記念するリート・アルバム。

ベートーヴェンの連作歌曲「遥かなる恋人に寄す」というと、私はこれまでヴンダーリヒ&シュミット1963年5月ウィーンライヴ盤が好きで、そのヘルデンテノール風、とまでは言わないにしても力強くロマン的な趣のある歌声がベートーヴェンに合う気がして、好んで聴いてきた。

 

 

しかし本当は、ベートーヴェンの晩年様式に差し掛かり、シューベルトやシューマンのリートを指し示しているこの曲の天国的な美しさを、より繊細に表現してくれる演奏を探していた。

それが、嬉しくも今回のボストリッジ&パッパーノ盤によって叶うこととなった。

 

 

同時期に書かれたチェロ・ソナタ第4番の、チェロの高音域の美しい旋律のように、後期様式特有の静かな感動に包まれた、重さから解放された歌を聴きたい―そんな欲求を、上記のヴンダーリヒ&シュミット盤やつい先日発売されたゲルネ&リシエツキ盤(これらも良いものだが)にも増して、このボストリッジ盤がかなりのところまで満たしてくれた。

 

 

それ以外の歌、例えばベートーヴェン初期の代表作「アデライーデ」においても、ボストリッジのさわやかな歌声が曲にぴったり合っている。

彼は若い頃からの美声を今も概ね保っているが、これは(他の歌手の例などから察するに)決して簡単なことではあるまい。

また、パッパーノのピアノも、イタリア系の明るい音色が良い。

 

 

以前の彼のアルバムについての記事にも書いたが(下記のリブログ元の記事)、リート向きの軽めの声質を持つテノール歌手の中でも、私のとりわけ好きな三人、そのうちの一人であるボストリッジには、今後もできるだけ多くの録音を残してほしいものである。

可能ならばシューベルト、シューマン、ヴォルフのリート全集をぜひ!

 

 

「遥かなる恋人に寄す」 より 第1曲 「丘の上に登り」

 

 

 

 


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