第1回 「オンデマンド・コンサート Hand in hand」
※無観客公演、ライブストリーミング配信
【日時】
2020年4月1日(水) 開演 19:00
【会場】
サントリーホール ブルーローズ (東京)
【演奏】
ピアノ:反田恭平
サクソフォン:上野耕平
クラリネット:アレッサンドロ・ベヴェラリ
オーボエ:荒川文吉
ファゴット:皆神陽太
フルート:清水伶
フルート:山本英
ファゴット:大内秀介
【プログラム】
シューマン/リスト:献呈
(ピアノ:反田恭平)
ウェーバー:アンダンテとハンガリー風ロンド Op.35
(ファゴット:大内秀介, ピアノ:反田恭平)
デザンクロ:プレリュード、カデンツァとフィナーレ
(サクソフォン:上野耕平, ピアノ:反田恭平)
プーランク:オーボエ、ファゴットとピアノのための三重奏曲
(オーボエ:荒川文吉, ファゴット:皆神陽太, ピアノ:反田恭平)
ドップラー:2本のフルートとピアノのためのソナタ Op.25 より
(フルート:清水伶・山本英, ピアノ:反田恭平)
ドビュッシー:プレミエ・ラプソディー
(クラリネット:アレッサンドロ・ベヴェラリ, ピアノ:反田恭平)
※アンコール
ガーシュウィン:アイ・ガット・リズム
(クラリネット:アレッサンドロ・ベヴェラリ, ピアノ:反田恭平)
バザン:バザンのロマンス~歌劇《パトラン先生》
(サクソフォン:上野耕平, ピアノ:反田恭平)
下記のリブログ元の記事に書いた、反田恭平らによる有料ライヴ配信コンサートを聴いた。
さすが有料配信だけあって、音質はかなり良いし、カメラワークやトークの配分もしっかり打ち合わせされている印象。
今回は、木管楽器をテーマにしたコンサートであった。
リブログ元の記事から多少曲目変更されているが、新型コロナウイルス感染拡大リスクを避けるため、人数の多いオーケストラ曲は中止したもよう。
最初の曲は、シューマン/リストの「献呈」。
この曲で私の好きな録音は
●ユンディ・リ(Pf) 2002年10月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●トリフォノフ(Pf) 2011年10月26日&2012年1月24日、4月12日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●藤田真央(Pf) 2018年1月29-31日セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
シューマンのクララへの想いが込められたこの曲は、やはりこれら3盤のように思い切りロマンティックに弾いてほしい。
ただ、今回の反田恭平の演奏はルバートやタメがかなり多く、さすがに少し濃すぎたか。
それでも、この曲のロマン性をぐっと引き出そうとする姿勢はしっかり感じられた。
2番目の曲は、ヴェーバーの「アンダンテとハンガリー風ロンド」。
この曲は馴染みがないが、ファゴットがソリスティックに活躍する曲(ヴェーバーはクラリネットの曲も数多く書いており、木管楽器が好きだったのだろうか)。
反田恭平のピアノが大変にロマン的で、かつ強音部ではヴェーバーらしからぬほどに力強く、個性的でインパクトがあった。
3番目の曲は、デザンクロの「プレリュード、カデンツァとフィナーレ」。
これも馴染みのない曲で、作曲者もあまりよく知らないが、近現代曲ながら割と聴きやすい。
今回の上野耕平&反田恭平の演奏で聴く限り、まるで後期ロマン派のように濃厚な味わいを持つ、聴きごたえのあるかっこいい曲と感じた。
4番目の曲は、プーランクの「オーボエ、ファゴットとピアノのための三重奏曲」。
この曲で私の好きな録音は
●ピエルロ(Ob) アラール(Fg) プーランク(Pf) 1957-59年セッション盤(Apple Music/CD)
●スビスキ(Ob) ハンニスダル(Fg) ヒルヴォネン(Pf) 1988年頃セッション盤(NML/Apple Music)
●シェレンベルガー(Ob) トゥルコヴィチ(Fg) レヴァイン(Pf) 1989年4月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ルルー(Ob) デュケスノワ(Fg) シュトロッセ(Pf) 1995年2月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
今回の荒川文吉&皆神陽太&反田恭平の演奏は、さすがにこれら4盤ほどの鮮やかさはないものの、オーボエもファゴットもなかなか健闘していた。
また、やはりここでも反田恭平の個性がよく出ていて、がつんと強調される低音など印象的。
この曲らしい表現かと言われると少し違う気もするが、彼はこうしたアンサンブル曲でも自分の色を出しに行ける人だと感じた。
5番目の曲は、ドップラーの「2本のフルートとピアノのためのソナタ」より第1、3、4楽章。
もともと「アンダンテとロンド」として知られていたものが、実は「ソナタ」の第3、4楽章であったことが判明し、第1、2楽章はつい最近発見されたのだという。
「アンダンテとロンド」は2本のフルートのための曲としては最も有名なものの一つのようであり、聴き慣れた人にとっては「ソナタ」として聴くのは新鮮かもしれない。
この曲に聴き覚えのない私にはピンとこないけれど、こうした最新の知見を織り交ぜたマニアックな演奏会は大歓迎である。
最後の曲は、ドビュッシーの第1狂詩曲。
この曲で私の好きな録音は
●P.メイエ(Cl) ル・サージュ(Pf) 1991年4月23-25日セッション盤(Apple Music/CD)
●S.マイヤー(Cl) アバド指揮 ベルリン・フィル 1998年12月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●P.メイエ(Cl) 準・メルクル指揮 フランス国立リヨン管 2010年9、10月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●P.メイエ(Cl) カンブルラン指揮 読響 2018年4月13日横浜ライヴ(動画)
あたりである。
今回のベヴェラリのクラリネットは、弱音部などこれら4盤に近い繊細さを持つ好演だった。
動きの多い終盤では、雑音が混じりがちになるなど余裕がなくなっていたけれど、全体的には完成度高め。
反田恭平のピアノも、前奏部など「月の光」のような独特の甘い雰囲気があり、なかなか聴かせる。
アンコールは、ガーシュウィンとバザン。
これらは今回の演奏の中でもとりわけ印象的で、ジャジーでほんのりセンチメンタルな前者に、人々の平安や憩いを祈るような後者、ともに心動かされた。
4月2日の12:00~23:59に「見逃し配信」があるようであり、未聴の方はぜひ。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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