大阪フィルハーモニー交響楽団 第530回定期 エッティンガー チャイコフスキー 交響曲第4番ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

大阪フィルハーモニー交響楽団

第530回定期演奏会

 

【日時】

2019年7月18日(木) 開演 19:00 (開場 18:00)

 

【会場】

フェスティバルホール (大阪)

 

【演奏】

指揮:ダン・エッティンガー

ピアノ:清水和音 *

管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

(コンサートマスター:田野倉雅秋)

 

【プログラム】

リャードフ:ポロネーズ 作品49

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第1番 嬰ヘ短調 作品1 *

チャイコフスキー:交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

 

※アンコール(ソリスト) *

スクリャービン:2つの詩曲 作品32 より 第1曲 嬰ヘ長調

 

 

 

 

 

大フィルの定期演奏会を聴きに行った。

指揮は、1971年生まれのイスラエル出身の指揮者、ダン・エッティンガー。

東フィルの常任指揮者を務めていたことのある彼だが、大フィルには今回が初登場とのことである。

私が彼の実演を聴くのも、今回が初めて。

 

 

最初の曲は、リャードフのポロネーズ。

私にはあまり馴染みがないが、チャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」のポロネーズを思わせる曲で、曲調・演奏ともに華やかだった。

 

 

次の曲は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番。

この曲で私の好きな録音は、

 

●ラフマニノフ (Pf) オーマンディ指揮フィラデルフィア管 1939年12月4日、1940年2月24日セッション盤(NMLApple MusicCD

●リヒテル (Pf) ザンデルリング指揮ソビエトRTV大交響楽団 1955年2月18日セッション盤(NMLApple MusicCD

●ルガンスキー (Pf) オラモ指揮バーミンガム市響 2002~2003年セッション盤(NMLApple MusicCD

●マツーエフ (Pf) ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管 2014年11月16日サンクトペテルブルクライヴ盤(NMLApple MusicCD

●古海行子 (Pf) 2017年5月5日東京ライヴ(動画) ※第1楽章のみ

 

あたりである。

今回の清水和音の演奏は、力強いという面では上記マツーエフ盤に通じるところがあるが、充実した余裕のある音というよりは、力んだような硬い音だったのは残念(なお、強い打鍵のためか、途中で中音域のいずれかの音の調律がずれていた)。

ロマンティックなメロディの歌わせ方も、悪くはないのだが洗練はあまりない。

また、速い走句や、左右の手による交互のトレモロなどでは、もう少し明瞭度がほしいところ。

ただ、全体的に男らしい(漢らしい?)迫力のある演奏ではあり、その意味ではアンコールのスクリャービンよりも、ラフマニノフのほうが合っていたように思う。

それに何よりも、聴き飽きた2番や3番でなく、1番を選んでくれたのはありがたい。

 

 

最後の曲は、チャイコフスキーの交響曲第4番。

この曲で私の好きな録音は、

 

●メンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管 1929年6月セッション盤(CD

●フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル 1951年1月4、8~10日、2月16日セッション盤(Apple MusicCD

●ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル 1960年9月14~15日セッション盤(NMLApple MusicCD

●カラヤン指揮ウィーン・フィル 1984年9月17~24日セッション盤(NMLApple MusicCD

●ソヒエフ指揮トゥールーズ・キャピトル国立管 2006年7月セッション盤(NMLApple MusicCD

 

あたりである。

今回のエッティンガーの演奏は、テンポや強弱の変化のかなり多い演奏だった。

特に終楽章は、タメや加速がやたらと聴かれる。

速い箇所はとことん速く、大きい音はとことん大きく、といった派手めのアプローチだった。

闘争から勝利へ、などといった物語性はとりあえず措いておいて、その場その場のロマンや熱狂を楽しもう、というスタンス。

その意味では、上記録音の中ではメンゲルベルク盤に近いかもしれない。

重々しいフルトヴェングラー盤や疾走するムラヴィンスキー盤が、ともにきわめてシリアスな解釈となっているのに対し、メンゲルベルク盤にはきまぐれな明るさ、華やかさがある。

ただ、一筆書きのような即興性を感じるメンゲルベルクと違い、エッティンガーはもっと現代風で、細部の工夫を作り込んでいる。

その分、個々の部分が分断されがちで、「木を見て森を見ず」といった印象が拭えない。

また、強音の鳴らし方がけたたましく、上記ソヒエフ盤のような、華麗さとともに柔和さもある美しい強音を聴くことはできなかった。

と、つい文句を書いてしまったが、それは数多いる没個性的な指揮者たちとは一味違う才能を感じたからこそでもある。

華やかで開放的な、楽しい演奏だった。

 

 

なお、コンサートマスターの田野倉雅秋が、今月いっぱいで大フィルを辞めるとのこと。

これまで大フィルを引っ張ってくれた彼がいなくなるのは惜しいが、今後の日フィルでの活躍が期待される。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 


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