第7回 仙台国際音楽コンクール ピアノ部門 予選 第1日
【日時】
2019年5月25日(土) 開演 10:00
【会場】
日立システムズホール仙台 (仙台市青年文化センター)
宮城県の仙台市で開催される、第7回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門が、ついに始まった(公式サイトはこちら)。
5月25日は、予選の第1日。
この日のみ、実演を聴きに行った。
ちなみに、第7回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者一覧発表)
(第7回仙台国際音楽コンクール(ヴァイオリン部門) 出場者一覧)
(edy classic 【第7回仙台国際音楽コンクール】新進気鋭のピアニストたち)
(アルベルト・カーノ・スミットが第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門)への出場を辞退)
1.
42 ユン・ジュン YOON Joon 1993- 韓国
スクリャービン/ ピアノ・ソナタ 第10番 op.70
モーツァルト/ ピアノ・ソナタ へ長調 K332
ラヴェル/ ラ・ヴァルス
ピアノはスタインウェイ。
技術的にはなかなかだが、音色はやや地味で、歌わせ方もところどころしっくりこない。
また、恣意的なテンポ変化が散見される(特にラ・ヴァルスのコーダなど、ほとんど拍が分からないほど)。
2.
39 ステファニー・タン Stephanie TANG 1994- アメリカ
シューマン/ ダヴィット同盟舞曲集 op.6
ピアノはスタインウェイ。
音の線が細く、強音が硬めだが、弱音はかなり美しい(特に第2、14、17、18曲など)。
ただ、技巧的な見せ場の多いとはいえないこの曲で、それを補うほどの詩情が感じられたかというと、そこまではいかないかもしれない。
3.
15 チョン・ヨンファン JEONG Yonghwan 1991- 韓国
ベートーヴェン/ ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 op.111
リスト/ 巡礼の年 第2年 イタリア 「ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲」 S161-7
ピアノはスタインウェイ。
充実した力強い音が出ているが、表現が何とも薄味。
これらの曲のパッションもロマンティシズムも伝わってこない。
4.
20 小林 海都 KOBAYASHI Kaito 1995- 日本
ハイドン/ ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI:6
シューベルト/ 即興曲 ヘ短調 D935-1
スクリャービン/ 前奏曲 イ短調 op.11-2
ストラヴィンスキー (アゴスティ編曲)/ 組曲「火の鳥」
ピアノはスタインウェイ。
柔らかで潤いのある、美しい音を持つ。
ロマン的でしっとりとしたハイドン、ため息のようなフレーズの収め方が美しいシューベルト、幻想的な味のあるスクリャービン。
いずれの曲も、「詩的」という形容がよく似合う演奏となっている。
ストラヴィンスキーは、あまりアグレッシヴなテンポ設定ではないが、そのぶん表現が音楽的に豊かであり、だれやすい「子守歌」の部分も聴かせる。
5.
24 ヴィクトル・マスロフ Victor MASLOV 1997- ロシア
ハイドン/ ピアノ・ソナタ ロ短調 Hob.XVI:32
シューマン/ ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 op.14
ピアノはスタインウェイ。
ロシアらしい、大きく深々とした音が良い。
ただ、ときに強音の質がきつかったり、パッセージが滑らかでなくバタバタしていたり、付点リズムが甘かったりと、アラもある。
6.
05 ウィリアム・デイヴィッドソン William DAVIDSON 1992- アメリカ
ハイドン/ ピアノ・ソナタ ホ長調 Hob.XVI:31
リゲティ/ ピアノ練習曲集 第2巻 第10番 「魔法使いの弟子」
ブラームス/ ピアノ・ソナタ 第1番 ハ長調 op.1
ピアノはスタインウェイ。
先ほどの小林海都とは違った、カラリと乾いたハイドンで、こちらもこちらで良い。
リゲティも良いが、ブラームスまであっさりしていて、さすがに少し物足りなかった(ブラームス以外の曲なら印象は違ったかも)。
7.
14 ファン・ゴンヨン HWANG Gunyoung 1991- 韓国
シューマン/ トッカータ ハ長調 op.7
モーツァルト/ 幻想曲 ニ短調 K397
プロコフィエフ/ ピアノ・ソナタ 第6番 イ長調 op.82
ピアノはカワイ。
図抜けて力強く圧倒的な音を持ち、技巧的にも優れている。
テンポは落ち着いていることが多く、シューマンのトッカータやプロコフィエフの終楽章はもう少し攻めてほしかったけれど、そのぶん安定感がすごく、トッカータ展開部の連続オクターヴなど完璧だった。
特にプロコフィエフのソナタ第6番は、細かいところでは気になる部分もあったが(例えば「ソファミ」(階名表記)という三度和音の下行音型がしばしば不明瞭)、迫力といい表現力といい、同曲の最上級の演奏の一つと言ってよさそう。
8.
30 パク・スホン PARK Soohong 1992- 韓国
ベートーヴェン/ ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 op.109
ベリオ/ 6つのアンコール:水のピアノ、地のピアノ、火のピアノ
ブラームス/ パガニーニの主題による変奏曲 op.35 第2巻
ピアノはスタインウェイ。
洗練されたというよりは、素朴な演奏という印象。
音色が美しく、ベリオの3曲など味わい深かったが、ベートーヴェンやブラームスではもっと表現力がほしいところ。
9.
31 パク・イェラム PARK Yeram 1996- 韓国
J.S.バッハ/ フランス組曲 第5番 ト長調 BWV816
ベートーヴェン/ ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 op.31-3
スクリャービン/ ピアノ・ソナタ 第5番 op.53
ピアノはスタインウェイ。
歯切れのよい、くっきりとした音作り(特にバッハのクーラントやブーレやジーグ、あるいはベートーヴェンにおいて顕著)。
スクリャービンでは、くっきりとした造形と、スクリャービンらしい瞑想的な雰囲気とを両立させており、表現力もなかなかのもの。
ただ、音色そのものは硬めで、いかにも魅力的な音とは言い難いか。
10.
27 奥谷 翔 OKUYA Sho 1993- 日本
J.S.バッハ/ 平均律クラヴィーア曲集 第2巻 前奏曲とフーガ 第14番 嬰ヘ短調 BWV883
ドビュッシー/ レントより遅く
ショパン/ マズルカ風ロンド ヘ長調 op.5
ショパン/ 即興曲 第3番 変ト長調 op.51
ラヴェル/ ラ・ヴァルス
ピアノはスタインウェイ。
自然な感じの味わいがある(特にバッハやドビュッシー)。
ただ、そのぶん細部の工夫にはやや乏しいか。
ラ・ヴァルスではテンポ変化に工夫がみられるが、あまりうまくいっていない気がする(例えば和音とグリッサンドとの関係がアンバランス)。
11.
13 廣田 響子 HIROTA Kyoko 1993- 日本
ブラームス/ スケルツォ 変ホ短調 op.4
ベートーヴェン/ ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 op.57 「熱情」
ドビュッシー/ 喜びの島
ピアノはカワイ。
鋭くて情熱的な、集中力みなぎる表現が聴かれる。
あまり大きな音が鳴るほうではないようだけれど、それでも音に緊張感があり美しい。
「熱情」ソナタ、細かいところでは難もあれど(例えば第1楽章コデッタ主題で、その前の三連符半音階的下行部分よりも少しテンポが落ちるのは興をそがれる)、全体的にこの曲のデモーニッシュな面がストレートによく表現されているし、終楽章コーダでプレストのままテンポが落ちずに最後まで突っ切るのは見事。
12.
07 ライアン・ドラッカー Ryan DRUCKER 1993- イギリス
D.スカルラッティ/ ソナタ 嬰ハ短調 K.247
ヤナーチェク/ ピアノ・ソナタ 「1905年10月1日」
マスト/ 即興とフーガ
ショパン/ バラード 第4番 ヘ短調 op.52
ピアノはスタインウェイ。
かなりの実力者で、端正でべたつかない、よく通る美しい音を持つ。
スカルラッティ、大変に味わい深い。
ヤナーチェクではスラヴ風の感傷でなく西欧風の均整を感じるが、それでいて瞑想的であり、この曲らしい雰囲気をよく引き出している。
マストでは、急速なパッセージでも美音が保たれ、彼の余裕のある安定したテクニックが存分に発揮された。
ショパンでは、感傷的なルバートがあまりしっくりこなかったが(彼には不向きなのかもしれない)、それでもやはりうまく、何よりタッチが安定している(コーダの三度和音の半音階的上行音型も文句なし)。
13.
26 中迫 研 NAKASAKO Ken 1993- 日本
J.S.バッハ/ イタリア協奏曲 BWV971
ドビュッシー/ 映像 第2集
プロコフィエフ/ ピアノ・ソナタ 第4番 ハ短調 op.29
ピアノはスタインウェイ。
音が広々としていて美しい。
ただ、表現はやや一本調子な印象であり、右手も左手ももっと細かくニュアンスをつけて歌ってほしい(特に左手)。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは
20 小林 海都 KOBAYASHI Kaito 1995- 日本
14 ファン・ゴンヨン HWANG Gunyoung 1991- 韓国
13 廣田 響子 HIROTA Kyoko 1993- 日本
07 ライアン・ドラッカー Ryan DRUCKER 1993- イギリス
あたりである。
次点で、
05 ウィリアム・デイヴィッドソン William DAVIDSON 1992- アメリカ
31 パク・イェラム PARK Yeram 1996- 韓国
あたりか。
第2日以降は、ネット配信で聴く予定である(全部は聴けないかもしれないが)。
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