佐藤卓史 京都公演 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第12番「葬送」、第15番「田園」 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

「L.v.ベートーヴェン」

 

【日時】

2017年12月23日(土) 開演 20:00 (開場 19:30)

 

【会場】

カフェ・モンタージュ (京都)

 

【演奏】

ピアノ:佐藤卓史

 

【プログラム】
ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 op.26 「葬送」
ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調 op.28 「田園」

 

 

 

 

 

カフェ・モンタージュで行われた佐藤卓史のピアノ・リサイタルを聴きに行った。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第12番「葬送」と第15番「田園」という、なかなか渋いプログラムである。

佐藤卓史らしい、甘さを抑えた辛口の味わいのあるがっちりと力強い演奏に、カフェ・モンタージュのピアノの鄙びた音色が相まって、ベートーヴェンらしい渋い味がよく出ていた。

フリードリヒ・グルダの演奏をもう少し晦渋にしたような感じ、と言っていいかもしれない。

個人的に特に印象深かったのは、第12番第1楽章の最終変奏(三連符が主体の変奏)でほのかに深まる情感と、第15番終楽章コーダでの急速なパッセージの鮮やかさである。

部分的には危ういところもあれど、全体的に技巧も確かで、安心して聴くことができた。

 

 

曲間のスピーチで、佐藤卓史は「この第12番からベートーヴェンは実験的な新しい書法を始めました、第12番ではソナタ形式による楽章が一つもないという点が新しいのですが、第15番はいったいどんな点が新しいのか、皆さん聴きながら考えてみて下さい」というようなことを言っていた。

これは色々考えてみたが、これというものが思い当たらない。

そもそも、第12番から実験的な書法が始まったというのはよく言われることだけれど、考えてみるとベートーヴェンはピアノ・ソナタ第1番からしてすでに実験的である。

ハイドンもモーツァルトも、3楽章からなるピアノ・ソナタしか書いていないのに、ベートーヴェンは第1番でいきなり4楽章のソナタを書いたのだ。

その後もチャレンジだらけのベートーヴェンのソナタたちだが、この第15番で新しい点というのは、いったい何だろうか。

田園的情趣が感じられる、ということか?

しかし、ベートーヴェンは短調のソナタを書いたすぐ後の曲は、多かれ少なかれ「田園的」な曲にしているような気がする。

第1番に対して第2番、第5番に対して第6番、第8番「悲愴」に対して第9番、といったように。

今回の第15番が、第14番「月光」という短調のソナタに続く曲として、田園を思わせる穏やかな曲になっているのも、あまり新しいこととは言えなさそうである。

第15番の新しい点、なかなか難しい。

 

 


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