(レナード・スラットキン指揮デトロイト交響楽団による、チャイコフスキーの交響曲第4番) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

7月16日(日)に行われた、レナード・スラットキン指揮デトロイト交響楽団の大阪公演のチケットを買っていたのだが、前日の京響のコンサートに引き続き、所用のため行くことができなかった。

今回のプログラムは、以下のようなものだった。

 

バーンスタイン:「キャンディード」序曲
C.マクティー:ダブルプレー
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 op.36

 

ガーシュウィンのピアノは、小曽根真。

アンコールは、ソロ・アンコールでは小曽根真自作の「HOME」という曲、そしてオーケストラ・アンコールではF.スラットキン作曲「悪魔の夢」と、あとなんと「六甲おろし」が演奏されたとのこと。

かなりのサービス精神である。

聴いてみたかったのだが、残念。

 

というわけで、また代わりに録音を聴くことにした。

上記プログラムのうち、チャイコフスキーの交響曲第4番について、スラットキン&デトロイト交響楽団の組み合わせによる録音を見つけることができたため、これを聴いてみた(Apple Music)。

 

第1楽章の序奏からして、軽い驚きを覚えた。

この序奏は、金管の強奏が耳をつんざくような強烈なインパクトを与えるのが常かと思っていたのに、スラットキン/デトロイト響の演奏では強奏であってもどこか柔らかく、耳に優しいのである。

有名なムラヴィンスキー/レニングラード・フィル盤(NMLApple Music)などでは、もっと強烈で鋭い和音が聴かれるのに、スラットキンの場合は休止前の和音の切り方も何となくふわっとしている。

全体的に、この曲にところどころみられる尖った角を一つ一つ丁寧に切り取り、丸みを帯びさせた演奏のように感じた。

弦や管の歌わせ方も、丁寧で柔らかい。

思いのたけを歌い尽くすカンタービレという感じでもなく、かといってぶっきらぼうで味気ないわけでもなく、中道を心得ているような歌わせ方である。

テンポも落ち着いたものとなっており、突っ走ることがない。

ただ、そのぶん少しもっさりした感じを受けることがあるというのも否めない。

第1楽章もそうだが、特に終楽章がそうである。

ムラヴィンスキー盤のように、最強のコサック隊が一糸乱れず目にもとまらぬ速さで進撃していくような、有無を言わせぬ勢いは、ここでは聴かれない。

落ち着いたテンポということで、例えばフルトヴェングラー/ウィーン・フィル盤(CD)あたりに似ているかというと、そうでもない。

フルトヴェングラー盤では、遅いテンポではあっても、ぐわーっと押し寄せるような重厚さと熱狂があるけれども、スラットキン盤にはそれがなく、もっと朗らかな雰囲気がある。

これはこれでとても良いと思うけれど、見方によっては、現代の新進気鋭の若手指揮者たちのような洗練までいく一歩手前の、やや過渡的な演奏とも言えるかもしれない。

 

この録音を聴いて、私は思い出した。

スラットキンという指揮者の演奏を、私はこれまでほとんど聴いてこなかったが、それでもずっと好印象を持っていたのだった。

なぜかというと、五嶋みどりの弾くパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番のCDで、指揮を担当している彼の演奏がとても良かったからである(NMLApple Music)。

かなり昔の話になるが、パガニーニのヴァイオリン協奏曲のCDを、サルヴァトーレ・アッカルド盤(NMLApple Music)しか持っていなかった頃、私は次に五嶋みどり盤を買った。

五嶋みどりの精妙な演奏にももちろん驚いたが、オーケストラ演奏の違いも面白く感じた。

アッカルド盤ではシャルル・デュトワ/ロンドン・フィルが伴奏をしていたのだったが、デュトワはこの曲の「イタリア的陽気さ」に重点を置いているようで、そのぶん弦楽器の手触りにやや粗さがあるように感じていた。

それに対し、五嶋みどり盤でのスラットキン/ロンドン響は、デュトワほどの開放感はなく陽気さは後退しているものの、弦の響きが丁寧で柔らかく、好感を持ったのだった。

今回久々に聴いてみると、やっぱり最近の若手指揮者に比べると少しだけもっさり感はあるものの(録音当時としてはすっきりしていたほうなのだと思う)、上記チャイコフスキーで聴かれたような丁寧さ、柔らかさがここにもあって、大変懐かしかった。

 

スラットキン、これまでほとんど聴いてこなかったけれども、やっぱり気になる存在であることを今回再確認した。

 

 


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