「W.A.モーツァルト」
― episode 4 - Wien 1782-85 ―
【日時】
2017年6月28日(水) 開演 20:00 (開場 19:30)
【会場】
カフェ・モンタージュ (京都)
【演奏】
ヴァイオリン:上里はな子
ピアノ:松本和将
【プログラム】
W.A.モーツァルト:
ヴァイオリンソナタ 第38番 ハ長調 K.403
ヴァイオリンソナタ 第37番 イ長調 K.402
ヴァイオリンソナタ 第40番 変ロ長調 K.454
ヴァイオリンソナタ 第41番 変ホ長調 K.481
カフェ・モンタージュでの、上里はな子&松本和将によるモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ・シリーズ。
今回は「エピソード4」のタイトルで、ソナタ第37、38、40、41番が演奏された。
第37、38番は、めったに演奏されることのない曲。
カフェ・モンタージュのマスターの解説によると、この2曲が書かれた1782年というのは、モーツァルトがJ.S.バッハの曲を初めて知った時期、なおかつ新婚ほやほやの時期だったとのこと。
そのため、バッハの影響を受けたフーガが含まれていたり、また妻コンスタンツェとのデュオを想定してか、かなりシンプルな書法で書かれていたり(まるで少年期の作品のような)、といった特徴がある。
しかしモーツァルトとしてはいまいち満足のいく出来ではなかったのか、2曲とも未完のままで置かれている(マクシミリアン・シュタートラーという人がのちに補筆)。
確かに、2曲ともこじんまりしていて一級の名作とは言い難いのかもしれないが、こうして聴いてみると本当に良い曲である。
第38番、確かにシンプルだけれど、いつものモーツァルトらしく、実に爽やかで心地よい音楽の流れが聴かれる。
第37番のほうは、アリーナ・イブラギモヴァとセドリック・ティベルギアンによる録音にも含まれている。
この第2楽章はかっちりしたフーガで、やや堅苦しいというか、いつものモーツァルトとは異なる「習作」風な雰囲気はあるけれども、それでも何とも言えず良い曲である。
そして次の2曲である第40、41番は、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの中でも最後期の作品。
こうして並べて聴くと、先ほどの2曲がモーツァルトならでは魅力を十分に有しているとはいっても、音楽の書法の充実度という点では、やはりこちらの2曲が飛びぬけていると言わざるを得ない。
今さら言うまでもないが、ヴァイオリン・ソナタ史でもとりわけ輝かしい光を放つ2曲だと改めて感じた。
今回、上里はな子と松本和将によるモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ演奏会は、エピソード2、3、4が終了した(このうち私が聴けたのは3と4)。
9月には、エピソード1、5が開催予定とのことである。
それぞれ、より若い頃の作品と、より晩年の作品が取り上げられるということだろう。
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの中で、私が一番と言っていいくらい好きな第42番は、エピソード5で取り上げられるだろうか。
今から楽しみである。
ところで、終演後のマスターの解説で、「上里さんはシモン・ゴールドベルクのお弟子さんなので、ぜひモーツァルトのヴァイオリン・ソナタを、とお願いしました」というような話があった。
私は彼女の演奏を初めて聴いたときから(そのときの記事はこちら)、彼女の演奏のドイツ風な重厚さ、重心の低いロマン性に感銘を受けたのだったが、なるほど彼女はそういった要素を、もしかしたらゴールドベルクから受け継いだのかもしれない、と今回私は一人で納得したのだった。
ゴールドベルクは、かの大指揮者フルトヴェングラーがベルリン・フィルの常任指揮者を務めていた頃にコンサートマスターとして抜擢された人で、以降世界的に活躍した名ヴァイオリニスト。
こうしてフルトヴェングラーと間接的にでもつながりのある奏者の演奏を実際に聴くことができ、しかもその演奏にドイツの香りが感じられるというのは、私には大変嬉しいことである。
なお、上里はな子自身は、おそらくそんなことは気にしておらず、マスターから上記のようにお願いされて「あの先生、そんなに偉い人だったの」とのたまったというから、何とも面白いものである(笑)。
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