イスラエルで開催されている、第15回ルービンシュタイン国際ピアノコンクール。
2次予選が始まった。
5月2日は、2次予選の第1日。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
CHEN Han (Taiwan Age: 25)
A. Dorman:Sonata No. 5
- Adagio con rubato
- Presto volando
L. Janáček:Sonata 1.X. 1905, "From the Street”
- Foreboding (Předtucha) -- Con moto
- Death (Smrt) - Adagio
Liszt:Sonata in B Minor, S. 178
ピアノはシゲル・カワイ。
ドルマン(課題曲)は、聴いたことのない曲で判断が難しいが、キレのある演奏のように思われる。
ヤナーチェクは力強い演奏であったが、こういった渋い曲の扱いがとてもうまいかというと、微妙なところか。
彼の弱点が出てしまったかもしれない。
リストは、彼ならではの強靭な音、明晰な技巧が最高度に発揮された名演。
滅法うまい。
やっぱり、リストはこうでなくては。
OKROS Luka (Georgia Age: 26)
Mozart:Fantasia in D Minor, K. 397
B. Olivero:On Water, Wind and Bells
Rachmaninov:Six Moments Musicaux, Op. 16
I. Andantino
II. Allegretto
III. Andante cantabile
IV. Presto
V. Adagio sostenuto
VI. Maestoso
Rossini/ Ginsburg:Paraphrase on Figaro's Aria from "Barber of Seville"
ピアノはファツィオリ。
モーツァルトは、かなりゆっくりめのテンポで開始される。
1次で落ちたKongのような、正統的な演奏と比べると、やや癖がある。
ただ、こちらはこちらで味わいが感じられた。
オリヴェロ(課題曲)は、ところどころにショパンの曲(バラード第4番、ノクターン第5番、いくつかのマズルカ)やシューベルトの曲(辻音楽師)などが聴こえてくる不思議な現代曲で、判断が難しいが、この曲の不思議な雰囲気をよく伝える演奏のようには感じた。
ラフマニノフも、情感が込められており、悪くない。
ただ、フォルテは硬めであり、有名な第4番など、やや耳をつんざくようなところがある。
ロッシーニ/ギンスブルクは、おそらく初めて聴いたが、オペラを彷彿させる楽しい曲。
演奏も陽気さが十分に出ており、良かった。
テクニック的にもかなりのものがある。
アンコールは、シューマンの「子供の情景」より「詩人は語る」。
これはなかなか味わい深かった。
全体に、まずまず好印象だった(1次よりも印象が良くなった)。
GASPARIAN Jean-Paul (France Age: 21)
Beethoven:Sonata No. 21 in C Major, Op. 53 ("Waldstein")
- Allegro con brio
- Introduzione: Adagio molto
- Rondo: Allegretto moderato - Prestissimo
Schumann:Sonata No. 2 in G Minor, Op. 22
- So rasch wie möglich
- Andantino: Getragen
- Scherzo: Sehr rasch und markiert
- Rondo: Presto – Prestissimo
A. Dorman:Sonata No. 5
- Adagio con rubato
- Presto volando
Prokofiev:Sonata No. 2 in D Minor, Op. 14
- Allegro ma non troppo
- Scherzo. Allegro marcato
- Andante
- Vivace
ピアノはスタインウェイ。
ベートーヴェンは、強靭なタッチというわけではないが、いくぶん軽めのタッチ、速いテンポで明晰に弾き進め、推進力もあり、なかなかの名演。
終楽章も清冽で良い。
シューマンもオーソドックスな良い演奏。
テンポがわずかながら頻繁に変わり、かっちりしたソナタ演奏というよりはやや勢いに任せたような自由な演奏だが、それはそれで悪くない。
ドルマン(課題曲)は、やはり判断が難しいが悪くない。
プロコフィエフはとりわけ良く、推進力があり、かつ勢いだけでなく、細部まで作り込んでいる。
彼のやや軽めで硬めの鋭いタッチが、プロコフィエフの諧謔的な曲調によく合っている。
終楽章のキレもさすが。
MITREA Florian (Romania Age: 27)
Schubert:Sonata in A Minor, D 784
- Allegro giusto
- Andante
- Allegro vivac
Liszt:Sonata in B Minor, S. 178
B. Olivero:On Water, Wind and Bells
ピアノはシゲル・カワイ。
やはり相変わらず音は硬質だけれども、シューベルトらしい歌はけっこう感じられる。
タッチもよくコントロールされており、音階風パッセージなどかなり滑らか。
フォルテはきつめで、私の思うシューベルトの音とは違っているけれども。
リストは、今日最初に弾いたChenとは異なり、強靭な打鍵で激しく攻めるというよりは、落ち着いた冷静な演奏である。
もちろんこちらも十分に力強いが、かっちりしており、いわゆるヴィルトゥオーソ的演奏とは少し違う。
これはこれでなかなか良い。
やっぱり音は少し硬めだけれども。
オリヴェロ(課題曲)も、悪くない。
PARK Jaehong (South Korea Age: 18)
Prokofiev:Sonata No. 6 in A Major, Op. 82 (1940)
- Allegro moderato
- Allegretto
- Tempo di valzer lentissimo
- Vivace
B. Olivero:On Water, Wind and Bells
Chopin:Tarantella in A-flat Major, Op. 43
Chopin:Nocturne in E-flat Major, Op. 55, No. 2
Chopin:Scherzo No. 4 in E Major, Op. 54
ピアノはスタインウェイ。
プロコフィエフは、乾いたタッチによる明瞭な演奏。
相当にうまい。
この曲では私は2015年浜コンのアレクセイ・メリニコフの演奏が好きだが、それに匹敵するかもしれない。
メリニコフでは乾いた中にもロシア風のロマンティシズムが感じられるのに対し、Parkの場合はよりいっそう乾いたような印象がある(明瞭度が高い、というか)。
オリヴェロ(課題曲)も、悪くない。
ショパンも良い。
技巧に余裕がある。
ノクターンでは、もちろんうまいがやや落ち着きすぎと言えなくもないが、このあたりは好みの問題だろう。
スケルツォはきわめて滑らかで流麗である。
DANESHPOUR Sara (USA Age: 30)
A. Dorman:Sonata No. 5
- Adagio con rubato
- Presto volando
Haydn:Sonata in F Major, Hob. XVI:23
- Allegro moderato
- Adagio
- Finale: Presto
Chopin:Barcarolle in F-sharp Major, Op. 60
Prokofiev:Sonata No. 8 in B-flat Major, Op. 84
- Andante dolce
- Andante sognando
- Vivace
ピアノはスタインウェイ。
ドルマン(課題曲)は、もちろん悪くないのだが、Chenなどこれまでのコンテスタントたち比べるとやや技巧的にいっぱいいっぱいな感があるか(和音連打など)。
ハイドンは、コロコロと軽やかなタッチを持つ彼女によく合っている印象(1次のバッハも印象的だったが、彼女はバロックや古典派の曲が得意そう)。
ショパンも、情感がありなかなか良い。
プロコフィエフも、冒頭からなかなか雰囲気がある。
1次のHuangはよりヴィルトゥオーソ的な演奏だったが、Daneshpourの場合はより丁寧に奏されている印象である。
フォルテはややきつく、朗々という感じではないけれども。
終楽章のコーダも、Huangほどの余裕はないけれども、十分に見事といえる。
皆うまいため、誰が本選に進んでもおかしくなさそう。
Parkは進む可能性が高そうな気がする(技巧的な余裕が飛びぬけている。やや淡々としているが)。
あとは個人的にはChenに進んでほしいが、リストは文句なしにせよ、ヤナーチェクがどう評価されるか。
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